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彩る君に恋をした。  作者: 椎名 椋鳥
13/31

再びあの世界へ


日付は一日経過しただけ。


 分からない。

なんで元の世界に帰れたのか、あれは現実に起きたことなのか?もとあと言えば、こっちの世界の奇妙な美術館に立ち寄って……。

 今まで起きたことを一つ一つ確認する。

確認できる、夢とは思えないくらい明確に覚えていた。

俺が今やるべきこと、結局俺をこの世界に呼んだのは誰なのか、なぜあの世界に行くことになったのか。

そして向こうの世界と唯一繋がる場所。


 もう一度美術館に行って原因を確かめるしかない。

 学校なんてどうでもいい。

今そこに面白そうなことが待ち構えているのだ。

朝の新鮮な空気を感じ、みなぎる好奇心に吹かれながら、あの美術館に向けて走り出す。


 朝だから空いていないのか、そんな不安とは裏腹に美術館は普通に空いていた。

この間いた支配人はいないのか。

おそるおそる、館内を巡る。二回目だとしても不気味なのは変わらない。問題である絵の部屋にたどり着く。こここから沸いた光に飲み込まれてあの世界に行ったんだよな……。


しかしこの前見た絵とはまた違う絵が立て掛けられていた。


 これって……俺の描いた絵だ。


 椅子に腰掛ける王、そこに寄り添うように立つレオナ。

 なぜこの絵がここにある? 俺が王にプレゼントしたはずでは?

 膨らむばかりの疑問に追い打ちをかけるようなものがその隣に立て掛けられていた。


——夜の石像に、ここは海辺?


新たに掛けられている絵を凝視していると、前回のような眩い光が淵から溢れてくる。

大体の予想はできていた。二回目だから冷静に、パターンは分かっていた。

ゆっくりと目を閉じ、肩の力を抜く。その絵に手をかざし、ゆっくりと息を吐く。

 すると俺の体を光が包み込んでいった。




 ……。


 下が柔らかい。

 スヤスヤと寝息が聞こえる。

隣で誰か寝ているのか、俺はゆっくり目を開ける。


 この水色の髪……なんだレオナか。

 「って、ええええ!」


 あっやばい、起きたかな……?


「ふぁ〜朝ですか?」

 半目で寝ボケながらも俺と目が合うレオナ。


「へっ? 湊君、なんでここに?」

 意識がはっきりしたのか、顔を引きつりながら俺に尋ねた。

「ま、まさか私の寝込みを襲おうとして……」

「ち、違う違う!ワープしたらここにたどり着いたんだ!」

 ワープできる場所を選べないのが難点だよなぁ。ってか、めっちゃ警戒されているじゃん。

 明らかにドン引きされている。


「……ワープ、はて? それはどういうことですか?」

 あっ、そうか。俺がこの世界の人間じゃないっていうことをレオナにはまだ話してなかった。

 俺は前回のことも踏まえ簡潔に説明。レオナは少し俯きながらもしっかり聞いてくれた。


「……なるほど、それでこちらの世界に。理解はし難いですが」

 様子を見る限り、ある程度状況を分かってくれたようだ。


「因みに、ヒヨリにもこのことを説明したけど……」

「……はい、分かっております」

 あいつ、理解できないとレオナにも思われているのか……。


「それはそうと昨日はどこに行っていたのですか? 私たち探したんですよ。特にヒヨリが……」

「それに関してはすまない」


 探してくれていたのか。それは本当にすまないことをした。

不可抗力とはいえ、黙って部屋に戻るのはいけない行為だった。あとでヒヨリたちにも謝っておこう。


 レオナがみんなを呼んで朝食を摂りたいとのこと。

城の使いにヒヨリとメルを呼ばせる。

アードラや王様も加わるということで、朝から豪勢な食事になりそうだ。

城の会食場で待っているとヒヨリとメルが入ってきて俺を見つけるや否や大声で怒鳴る。

「どこ行ってたの湊君! 探したよ!」

「探したぞ!」

「ご、ごめん。悪かった」

 手を合わせ謝るが、相当怒っている様子。

これは機嫌が戻るのは時間がかかりそうだ。アードラと王様も到着し、食事を始める。

朝食のメニューはパンと野菜スープ、焼いたソーセージとスクランブルエッグといった普通の家庭にも見られるものだった。


 しばらくすると王様が俺たちに一つに任務を投げかける。

「アードラとレオナは知っていると思うが、この国から南の方向に進むと海辺の近くにアムージュという運河で有名な町がある。そこはここら辺りで最も栄えている商業都市だ。我がベルモントもいろいろな国とそこで貿易をしておる。だが最近アムージュの街から一向に連絡が途絶えておるのだ。そこでお前たちに頼みたいことがある。今、アムージュの街で何が起こっているのか確かめてきてくれるか?」


 海辺……あの壁画も海辺だった。

もしかしたら今回のターニングポイントはその街なのかもしれない。

「分かりました」

 俺たちは王直々の任務を従順受け入れる。


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