レオナ
王への謁見が終了したあと、俺とヒヨリはレオナに呼ばれ、城の屋上へと来ていた。
城下を一望できるこの場所はレオナにとってお気に入りの場所らしい。
一面に広がるオレンジ色の屋根が輝く夕日に照らされるコントラスト。
眩しくも鮮やかな風景。そこで三人は佇んでいると、ふとレオナは口を開く。
「湊君とヒヨリさん、本当にごめんなさい。騎士団に入っていきなり戦いなんて」
「そ、そんなことないですよ。戦うために騎士団入ったわけだし……」
あの草原で会った時のこと覚えているのか、聞いてみるか?
もし聞いて覚えてなかったりしたら、めちゃくちゃ恥ずかしいヤツだ。
「あの……湊君どうなさったのですか?」
オロオロする姿に気付いたのか、レオナから声をかけてきた。
「あっ……レオナ様、あの日のこと覚えてないですか? ほら、草原で会った時のこと」
言ってしまった。
「あの日、草原? なんのことです?」
レオナは首を傾げる。
……。
最悪のパターンだ。
絶対変なヤツだとか思われている。大体、単なる夢であって現実にあった話ではなかったではないか。
「いえいえ、なんでもないです。あぁ夕日が綺麗だな……」
場を濁す様に途端に出た言葉を口にする。
「なんだか湊君って……変な人ですね」
案の定、変な奴だと思われていた。
「そうなんですよ。この人、変態なんです! 私の着替え覗いたりして!」
「ヒヨリ! あれは不可抗力だろ!」
「いいえ絶対覗きました!」
「ふふふっ」
ヒヨリと俺のやりとりを見てレオナは静かに笑う。
「あなた達といるとすごく楽しいわ。もしよければ、その……お友達になってくれませんか?」
「もちろんだよ、レオナ様!」
ヒヨリはいつもの様に無邪気な笑顔を見せ、レオナの両手をギュッと握る。
「レオナでいいですよ。呼び捨ての方が固くなくていいですもん」
「分かった、じゃあよろしくねレオナ! あっ私のこともヒヨリって呼んで」
「分かったわヒヨリ。これからよろしくね。湊君も……ね?」
軽く会釈。草原で会った、ということはもう忘れよう。
夕日照らされる屋上で、俺とヒヨリは身分の違う王女レオナとの距離が大いに縮まった気がした。