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チョコレートビターエッジ  作者: 結友 孝晴
2/2

2話 聖戦前夜 切り札は超硬麗刀

チョコレートは武器ではありませんご注意ください。このストーリーはフィクションです。チョコレートは時に硬い物ですが、戦闘に用いると弊害が起こる可能性が高いです。


 冷斗は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の魔王を除かなければならぬと決意した。冷斗には経済がわからぬ。冷斗はチョコレートジャンキーである。チョコレートを愛し、チョコレートと共に彼の生涯を過ごして来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。悪逆非道を極める魔王智世子を退けると決意した。なぜなら、このままだと彼の買う事のできるチョコレートは4分の1になってしまうと考えた結果だった。

 前回のお話のまとめ:華々緒「チョコレート♪」


 冷斗の妹の華々緒は言った。

「じゃあさ、じゃあさ、おにぃは城に攻めちゃえばいいじゃん。そして、魔王と呼ばれている完美智世子を倒しちゃえばいいじゃん。」

「その手が有ったか!」

 冷斗はそして正義に目覚める。魔王に奪われし聖物チョコレートを救うべく彼は彼の持てる力の全てを使おうとした。彼は自分に正義があると信じている。それ故、悪を滅する必要があった。彼は自分ならやれると信じている。それ故、彼は来たるべき決戦に向けて準備を行った。今日は木曜日で有ったが、決戦は金曜日にしようと心に決めた。

 家に帰ると冷斗は自慢のワインセラーを改造したチョコレートセラーを開けた。そこの中は彼の世界と呼ばれ、そして、その人生を茶色に彩る物があった。そう、チョコレートだ。そして、チョコレートセラーを見て彼は落胆する。それは、彼のチョコレートセラーの最上段のチョコレートは無くなり、2段目のチョコレートも徐々に減っている。彼のチョコレートの食べる量は大体1週間1段分ずつ無くなる様計算し、その食べる量も制限している。今のチョコレートの価格は4倍、つまり彼が今までチョコレートセラーを埋める様に買っていた様にチョコレートを買うと、最上段の分しか買えない事になる。それは看過できる事態ではなかった。

 彼は2段目にある大量のチョコレートを取り出すと、決意の炎を燃やす様に1つ1つ食べていくのだった。

 そして、金曜日になった。冷斗は早くから学校に行く準備が整っていた。今日の彼は朝食を家族と食べた。冷斗の父、融気ゆうきと冷斗の母、温子あつこ、と冷斗の妹、華々緒が食卓を囲んだ。彼らの朝食は温かいご飯に温かい味噌汁、焼き鮭に納豆と普通の朝食であった。その中で冷斗のみ異質だった。彼はチョコレートを含むシリアルフード『聖天使環チョコワ』を牛乳と共に食べていた。彼だけ別メニューなのは仲が悪いとか、普段朝食に居ないとかと言う訳では無い。冷斗たっての願いだった。

「おはよっおはよっ、今日はおにぃも早いね!」

「おはよう、妹よ!今日は眠れなくてな。」

 事実だった。憎き魔王を倒す算段を考えていたら、楽しくなって眠る事ができなかったのだ。

「冷斗、眠れないのもいいが、勉学にも励むのだぞ。」

 彼の父の融気は言う。ただし、実の所半分本心では無い。それは、今日の授業中に明らかになるのだが・・・

「親父、心配しなくても大丈夫だよ。俺は勉学には支障は出さない。それと、母さん昨日はありがとう。母さんのお陰で始業式遅刻しないで済んだよ。」

 自信満々に言う。チョコレートの切れていない彼は頭はある程度正常になる。それが、彼の母には少し心配だった。

「あらあら、まぁまぁ、今日は大丈夫なの?」

「今日は大丈夫だよ。心配かけてごめん。」

 彼の母、温子は根本的な問題も解決できていないのに正常になっているのが心配だとは言えなかった。

 彼らの食卓で朝ごはんが終わり、父は仕事に出かけ、兄妹は登校するのだった。今日は余裕が有るので昨日の様な登校方法は取らなかった。

「おにぃおにぃ、魔王いつ倒しにいくんだいー」

「明日に実行しようと計画してる。」

「愚妹の力はいらないー?」

「要らないよ。挑むのは魔王の城だぞ?華々緒を守り切れるか分からない。俺だって生きて帰って来れるか分からない。でも、俺が魔王に挑む。そして、世界を救済するんだ。」

 兄妹の会話は壮大な事を言っているが、当然救済するのはあくまでチョコレートの価格である。

「俺にもしもの事があっても、復讐に燃えるんじゃないよ。俺が負けた時は犠牲になるのは俺だけだ。」

「なんの話をしてるの?私も混ぜてよ。」

 生徒会長にして冷斗の所属するクラス2-2の委員長、普通な少女、千恵がそこにいた。今日も三つ編みメガネが輝いている。

「俺たちは聖戦についての話をしているんだ。委員長は関わらないでほしい。俺にとって委員長は大切な存在だからだ。」

 冷斗が真面目な顔をして千恵を見ていた。千恵は少し照れている。

「そだそだー関わるなー、っておにぃこの人が大切な存在ってどういう事なのさー?」

 華々緒が目の色変えて聞いてきた。

「愚妹よ。それは―」

「それは、そのままの意味だよ。」

 千恵が冷斗の言葉を遮り、割り込んできた。冷斗の大切な存在である千恵はその理由があるのだが、それは別の話。

「へーへー、そうなんだー。」

 華々緒は笑顔で言葉を紡ぐ、しかし、周囲の温度が少し上がった。華々緒は熱野家の魔法師の宿命で怒りで周囲の温度が上昇しているのだった。そして、華々緒と千恵が笑顔で見つめあっていた。ただし、その背景には猛犬と妖狐が対峙している様だった。

「委員長は俺の大切な存在だって言ったろ?仲良くしろ!」

 冷斗は華々緒の頭にかるくげんこつを浴びせた。華々緒は冷斗の大切な存在だから仲良くしたくないと言いたかったが、堪えたのだった。

 それからは、適当に雑談し登校するのだった。

 冷斗は彼のクラスである2-2の教室に登校後、朝の超絶神聖時間チョコレートタイムに入った。貴重な正規チョコレートを惜しみなく食べる。それは、冷斗にとって至福の瞬間だった。彼の周りの生徒からすれば吐く様な量を食べているので、異常な光景だったが、異常が日常になっている彼のクラスでは普通に受け入れられているのだった。千恵は「相変わらずだなぁ」と呟くが、冷斗の耳には入ってこなかった。

 超絶神聖時間チョコレートタイムが終わったのは授業の1分前だった。最後のチョコレートの余韻に浸るのだった。そして、椅子に座り、顎と机をくっつけて机にひれ伏す様に脱力した状態で授業を受けるのだった。

 授業中になったが、教師は冷斗に注意する事が無かった。彼は完璧に脱力し、教科書すら開いておらず微動だにしなかった。それにも関わらず注意される事が無かったのは単純に成績が良かったからだった。冷斗が成績の良い理由は2つあった。

 1つ目は彼がチョコレートによって脳の栄養である糖分を異常に摂取し、脳が異常に活性化しているのだ。1説によると、人間は脳の使用率は10%しか使っていないという説が有る。その説が正しいのかは分からないが、冷斗の脳はその説に準拠したとして約40%を使っている程活性化していた。冷斗は完全記憶能力者ではないが、彼は授業の声を聴き教科の内容を全て把握していた。

 2つ目は冷斗の父、融気の方針だった。元々は勉強のやる気の無く、成績の悪かった冷斗に約束をしたのだ。定期テストで1教科毎に1位を取ったらお小遣いを1万上げてやる。総合で1位を取れたらお小遣いをさらに10万上げてやる。そう冷斗に約束したのだ。それでも、最初はダメだった。しかし、彼がチョコレートの魅力を知った時、彼は覚醒し全教科1位総合1位を取るのだった。教科は10教科あり、冷斗のお小遣いは月額20万増額した。そのお小遣いは勿論、神の創りし茶宝石チョコレートを買う為だった。それは、比較的、富裕層である魔法使いの家系の家計を切迫する内容だったが、苦渋した結果、跡取り息子育成の為に融気は止める事が出来なかった。

 そんなこんなで、昼休みになり、昼食は学食と購買のパンとお弁当という選択肢がメインの竹木戸高校ではあるが冷斗はお弁当を持参していた。ちなみに、冷斗を除き、熱野家はお弁当を持参する事が多かった。それは、熱魔法を得意としているため、暖かいお弁当を食べる事ができるのと冷斗のせいで家計が切迫している2つの意味が有った。

「今日はお弁当なんだ。」

 千恵が自分のお弁当を冷斗の机に置き、前の席の椅子を反転させて、冷斗と向かい合うように座った。

「チョコレートの価格が高いから購買の一部パンが売られなくなったんだよ。始業式の日に購買に紙が貼られているの見てさ。」

 冷斗は購買のチョコレートパンを買う事が多かったが、チョコレートの価格が高騰しているため購買はチョコレートパンのみ販売を止めていた為だった。

「それでなんだ!珍しいと思ったら。」

 と言いながら千恵は自身の弁当箱を開く、彼女のお弁当は綺麗に彩られた女子らしい弁当だった。卵焼き、たこさんウインナー、ポテトサラダにミニハンバーグ、ごはんその上には鶏そぼろが乗っている。普通の男子であれば、実に美味しそうなお弁当だった。

 しかし、冷斗はそのお弁当に興味が無さそうに自身のお弁当を開く。その弁当は・・・弁当箱の中に限りなく広がる茶色の世界、そうチョコレートのみだった。この男はなぜチョコレートをわざわざ弁当箱の中に入れたのか?それは彼にしか分からないだろう。

「あい・・・変わらず・・・だね。」

 千恵は予想はしていたが、苦笑いしていた。

「相変わらず美味しそうだろ?俺の弁当は男子の好む茶色一色だ!」

 冷斗は自信を持って言う。確かに、男子は茶色の物を好むが、それは肉の色が主に茶色い物が多いからだ。冷斗は千恵と昼食を取っているが、普通に可愛らしい千恵と昼食を共にしたい人は少なくなかった。しかし、他の生徒が割り込んで来ないのは意味が有った。想像して欲しい。一緒に食事を取る人間がチョコレートのみを摂取している姿を。君は食欲が湧くだろうか?一日だけならば問題ないだろう。毎日吐く様な量のチョコレートを摂取する人間と継続して食事に同席できるだろうか?私には不可能だ。1秒たりとも近くに居たくない。と思うかもしれない。冷斗の口臭も体臭もチョコレートの様な甘い香りが仄かにする。そんな甘ったるい香りを嗅ぎながら、食事をする気にならない人が多いのだ。そういう意味では、千恵は異質だった。それは彼女の家にも関係が有るのだが、それは別の話。

「男子が茶色好むのは冷斗くんとは別の理由じゃないかな?」

 千恵は正論を紡ぐ。

「そういう物なのか・・・」

 この会話を聞こえてしまった近くのクラスメイトはそういう物だよと心の中で突っ込みを入れていた。

 そうして、冷斗は午前と同じように脱力した状態で授業を受けるのだった。

 そして、放課後になり、千恵は生徒会の仕事があるため冷斗とは別行動し、一人で下校していると華々緒と合流してきた。

「やぁやぁ、おにぃ。決戦は明後日だね。準備はどーお?」

「我が妹よ。今、体調を戻している所だよ。昨日はチョコレートをあまり食べなかったせいで体調が悪い。3割位しか今は力が出せない。まぁ、明日には全力が出せる様に調整チューニングするさ。」

「流石流石、そんなおにぃにお守りを上げよう。」

 それは完美マートの袋に入っている物だった。包装されているが、形状から小箱の様だった。

「完美マートのこの袋・・・」

「お守り、お守り!明後日の決戦じゃーこの愚妹は役に立たなそうだからねー。」

 冷斗は華々緒の腕を掴み、その腕を引き、華々緒を抱きしめた。

「華々緒、ありがとう。お前は最高の妹だ。」

 華々緒は最初は言葉に出来なかった。素直に華々緒は嬉しかったのだ。だが、冷静になると恥ずかしかった。

「おにぃ、おにぃ。ここ公衆の面前だよ?」

 そう、ここは二人きりでもなければ只の下校中の帰り道なのだ。そんな所で男女が抱き合っていれば比較的異常な光景だった。周りはリア充爆発しろと思う人も居れば、冷やかしを入れる人もいた。ただ、冷斗はずれている。冷斗にはそんな常識が通用しなかった。

華々緒「ねぇねぇ、智世子さんも千恵さんも容姿説明があるのに、一番活躍しているヒロインの愚妹の容姿説明が無いのはどういう要件だぁ!と言う事で。」

???「そうそう。華々緒はカカオと言う名前の割に肌が極端に白く、炎の様な赤髪を持つ容姿端麗な少女だ。彼女の特徴は元気の良さとはちきれんばかりの乳房である。魔法は熱野家を象徴する様な熱魔法、幼少の頃は兄冷斗を圧倒する程だった。しかし、冷斗がチョコレートに目覚めてから魔法力が逆転した。熱野家としては標準の魔法力が有る。そして、冷斗は華々緒の事を女として愛している。」

冷斗「この愚妹が、自分の説明は合っているが、最後は違うじゃないか!だから華々緒は愚妹なのだ。」

華々緒「うえーん、うえーん。」

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