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時ちゃんなんかしんじゃえばいいのに  作者: 大上ユークリウッド
10/11

時ちゃんと私のその後

エピローグ


私と時ちゃんのその後


 あれから数日経って奇妙なことが起こる。

 近くで行方不明の男の人と女の人の事件。ご近所を自転車で走りまくる警戒態勢のお巡りさん。午前授業が頻繁に行われ、短くなる学校の時間。

 そして、時ちゃんのお家に入り浸る警察の人たち。どうやら事件のことで調べたいことがあるみたい。刑事さんもテレビ局の人も混ざって大事になっている。

 おかげで、時ちゃんは寝るとき以外、我が家に居るようになり(それを許可したのはお母さんだから仕方ないけど)毎日が騒がしい日々になった。

 でもなにも……何一つ、時ちゃんのお家からは事件の手掛かりが見つからないみたいで、一週間が経つと警察は手を引いて、他の場所を捜索した。

 いまでも、時ちゃんが怯えた表情で自分のお家を私のお部屋から見つめ、呟いていた言葉が私の頭から離れない。

「こーちゃん……大丈夫かな? 見つからないかな? ちゃんと隠せてるかな? 大丈夫かな? 燃え残しはないかな?」

 その言葉に私は首を傾げるばかりだったけど、時ちゃんがずっと不安そうにしてるから、らしくないよって頭を撫でてあげた。綺麗なうなじも触り放題だった。

 どうやら時ちゃんは私の知らないことをたくさん知ってるみたい。

 別に疑っている訳じゃないけど、やっぱり時ちゃんの観察はつづけた方がいい。

 日記帳に思い出せる日だけでも埋めていこうと思う。

 時ちゃんはなんで、どうして、何を考えて、生きているんだろう?

 あんなに一緒にいる身近な、ペットみたいな存在なのに、日記帳を書いてるとそればかりが頭に浮かんだ。

 それを考え続けないと時ちゃんが怖い存在に思えて体が震え出す。

 いつか私も? 時ちゃんが私から離れていったらどうなるの? 別の学校に、または別の地域に引っ越すとか、さらには職場が別だとか。大人になるほど道は分かれて、離れるのは必然となる。

 ずっと一緒なんて無理だから、今のうちに、少しでも考えておかないといけない。

 その時がきたら、私は私でいられるのだろうか。

 それを考えると、時ちゃんに支えられて生きている感じがした。そんなわけないのに。

 今だけはそう思えるんだ。将来が不安に感じる。

 だからこの日記は書き続けなければならない。

 時ちゃんが何者であるか、時ちゃんが何をしていたかを記録づけて、いつか私から離れる日が来ても、時ちゃんはこういう人なんだって思い出せるように。

 そんな日が本当に来るか分からないけど。

 

 その日を迎えるより早く……しんじゃえば……私はこんな日記を書かなくても、いいのに。


――続く。


次回はあとがきになります。

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