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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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956手間

 クリスと子狼たちを外で遊ばせる約束した日から数日、子狼たちも乳離れしてますます体格が大きくなってゆくころ。

 ようやくと言って良いのか、クリスに子狼たちの外デビューをお披露目することになった。

 

「早いのか遅いのか分からんが、外でのびのび遊ばせることが出来るのぉ」


「子狼たちにとっては、ここも十分広いと思うんだけどね」


「お蔭で運動不足にはなっておらんと思うがの、しかしやはり外と中では感じるものが違うからのぉ、この子らの成長を考えるのならばやはり色々なモノに触れさせねばの」


 子狼たちが産まれてから約ひと月を長いと見るか短いと見るか、元が野生の狼ということを考えれば遅すぎる気もしないでもないが、それは今更かと考えを捨てるように小さく首を横に振る。

 とにかく、見るもの全て、匂いも気配もマナも中とは違う、それは子狼たちにとっては素晴らしい経験になるはずだと今度は小さく首を縦に振る。


「さて、今から外に出るがあまり遠くに行かんようにの、ワシの目が届く範囲で遊ぶのじゃぞ?」


 何か新しい遊びをするのかと目を輝かせ、いまかいまかとそわそわしている子狼たちに言い聞かせれば、皆きゃんっと元気な返事をする。

 完全にワシの話など聞いていない様子だが、新しい遊びを前にした反応は人も狼も一緒なのかとワシは苦笑いする。


「まぁよい、それでは外に行こうかの」


 ワシの合図でアニスが扉を開ければ、突然の新しい光景に子狼たちは戸惑うが、それも一瞬のこと。

 次の瞬間には跳ねるようにして、扉の外へと飛び出していった。


「おぉ、元気が良いのぉ」


「あっという間に飛び出して行っちゃったね」


 子狼たちとは対照的にのんびりと外に出てるアイオとライオと共に、ワシとクリスも外に出る。

 子狼たちはきゃっきゃとそこらを跳ねまわっては、きょろきょろと顔を動かしたり、くんくんと地面の匂いを嗅いだりと一歩進んで二歩下がるではないが、興味があっちこっちに移ろっているようであっちに行ってこっちに向かってと、懸念していたようにあっという間に三々五々に何処か行くということは無さそうだ。


「んむんむ、こういう反応を見るのは、やはりいつ見てもよいものじゃのぉ」


「これは、あぁ、いいな」


 飽きた訳では無いだろうが、ひとしきり周囲を確認し終えると今度は兄弟同士でじゃれ合い始めた。

 楽しそうに尻尾を振りながら遊ぶ姿は微笑ましい、クリスやアニスだけでなくフレデリックや、遠くから何事かと見ていた騎士や文官の相好までもが崩れている。

 男がカワイイものに気を取られるのは不味いとでも思っているのか、何か思案する風に口を手で押さえ隠しているが、ワシの目にはばっちりとにやけている口元が見えている。

 まったく素直ではない、ニコニコと子狼を見守るクリスを見習えばいいのにと、ワシ一人皆とは違う意味でニヤニヤと笑みを浮かべながら子狼たちを眺めるのだった……

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