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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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951手間

 子狼たちが産まれてから二週間ほど経ちようやく目が少しずつ開き始め、常時ジト目のような状態になっているがその姿もまた可愛らしい。

 まだまだしっかりと物は見えていないようだが、目が見えるようになったから様々なモノに反応を示すようになり、一日の大半は寝ているがそれでも随分とやんちゃになってきた。

 起きてる間は何か興味のあるモノに向かって、少ししっかりしてきた足を使いよちよち歩きで近付いては、ライトに寝床へと戻されるを繰り返している。

 ただ、まだ素早く動くものはよく見えてないのか怖いのだろう、近付いてきたアイオからは逃げるかライトへ助けを求める鳴き声をあげる。


「アイオや、あまり無理に接すると嫌われるぞ」


 我が子に逃げられて落ち込むアイオを慰めながらも、アイオに釘を刺すことを忘れない。

 ここで子狼たちにアイオは逃げるべきモノと覚えられてしまったら、しっかりとアイオを自分たちの父親だと分かるころにはすっかりと嫌われてしまう可能性がある。

 アイオから何でワシは逃げられないのだという、恨めしそうな視線を受けるがワシが逃げられないのは当然だろう。

 何せ産まれた直後から世話をしてしっかりと匂いを覚えさせている、だからワシは逃げる必要のないモノと子狼からは認識されているので逃げられることはない。

 人も狼も、父親は赤ちゃんになかなか懐かれないのは同じなのだなと、苦笑いしつつアイオを撫でてやる。


「とりあえずあれじゃな、近づきたいときはゆっくりじゃの」


 ワシはひとしきりわしゃわしゃとアイオを撫でた後、子狼を構いに行く。

 一瞬びくりと身を竦めさせた子狼だが、やって来たのがワシだと分かるときゅうきゅうと甘えるような声を出す。

 一匹の首元をこしこしと指先で撫でてやれば、その一匹に他の七匹が何だこの匂いはとばかりによちよちと寄ってきてはふんふんと首元を嗅いでゆく。

 首元に付いた匂いに嫌がっていない様子に、ニヤリと一人ほくそ笑む。

 子狼の首元に付けた匂いは、さっきわしゃわしゃと撫でたアイオの匂い。

 一先ずはアイオの匂いに、子狼たちを慣れさせようというワシの心遣い、これを毎日続ければそのうちアイオ自身にも慣れてくれるだろう。

 そんなことを続けて一週間、目もパッチリと開き切り耳もしっかりと聞こえるようになって、さらにしっかりと歩けるようにもなりやんちゃ盛りになってきた。

 体格の方もしっかりと成長し、コロコロとしたぬいぐるみのような可愛らしい、犬の赤ちゃんと聞いて思い浮かべるような姿になった。

 もふもふと兄弟同士でケンカかじゃれ合いか分からないくらい取っ組み合って遊ぶ姿にワシは相好を崩し、アイオはようやく子狼に父親だと認識されたのか逃げられなくなりご満悦そうだ。

 更にはアイオが床に伏せれば遊べとばかりの子狼たちがその背によじ登りはじめ、上手く登れるころんと床に転がってはアイオが咥えて自分の近くに持ってきてやったりと、実によい父親をやっている。

 狼の父親としてそれが良いかはワシには分からないが……。


「ふぅむ、しかしこの子たちのエサはどうすればよいかのぉ」


 ひとしきり遊んだあとはライトのお乳を飲むのだが、体の成長に合わせ子狼たちに乳歯が生え始めたので、まだ与えてはいるものの授乳を嫌がり始めたのだ。

 生え始めの乳歯というものは意外に鋭い上に赤ちゃんの噛む力も存外強い、だから物凄く痛いのはワシも経験があるのでよく分かる。

 なのでそろそろ離乳食を与えてやった方がいいのだが、人の離乳食はある程度わかるが狼の離乳食というのは流石にわからない。

 

「詳しい者に聞くしかないかの」


 あとでアニスとフレデリックに相談しておくかと、んくんくと元気にお乳を飲む子狼を目尻をさげながら眺めるのだった……

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