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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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945手間

 祝勝パーティという名の夜会だが、戦勝に貢献した騎士たちはこの場には居ない。

 ワシとクリスの周囲に侍っていたフレデリックなどの一部の近衛は参加しているが、フレデリックも今回は参加者としてではなく警備としてなので、あの戦に出陣したもので参加しているのはワシとクリスだけ。

 それもそのはずこの夜会は位としては王主催の最上位の物であり、参加できるのは当主夫婦、その長男ないし妙齢の令嬢だけである。

 無論騎士であってもそこに当てはまれば参加できるが、基本的に騎士は次男や三男などの当主となれない者が就くので参加することは無い。

 準騎士ならばともかく、騎士は命の危険が常に付きまとう非常に過酷な職業、余程酔狂な者か変わりが居る者でないと当主や跡継ぎの立場で騎士に就く者は居ない。

 何せ領内各地の街道などの巡回、雪で閉ざされた道の復興などなど、これを魔物や獣の脅威にさらされながら行うのだ、その過酷さたるや筆舌に尽くしがたい。

 その騎士たちが参加しない祝勝パーティは意味があるのかと思わないでもないが、記念ということで残念ながら騎士たちはあまり関係ないそうだ。

 それではあまりに騎士たちが可哀そうであるが、騎士たちは騎士たちで後日夜会ではなく宴会を行うらしく、正直ワシとしては夜会よりもそちらに参加したかった。


「前もそうじゃったが、自由に飲み食いできんのは辛いのぉ」


「ははは、だろうと思って終わる頃に別室で食べれるようにしておいたから。あ、もちろんドレスを着替えてからだけどね」


「おぉ、流石クリスじゃ」


「提案してきたのはアニスとフレデリックだけどね」


「なるほど、あの二人ならばさもありなん」


「だね、流石侍っているだけはある」


 クリスの最後の言葉に若干棘があったような気がするが、後で存分に食べれるとなれば気はずいぶんと軽くなる。

 ワシは腹が減ることは無いが、それでも目の前で楽しそうに立食とはいえ食事をされては、なかなかに辛いものがある。

 無論ワシらとて、食事などが置かれているテーブルに行って料理を取ることが禁じられている訳では無い、だがワシらがそんなところに出向いたのならばあっという間に囲まれることは想像に難くない。

 さしものワシも釣り堀に投げ込まれる餌にはなりたくない、腕力で薙ぎ払えるのならば気にもしないが……。

 

「して、ワシらはどれ程ここに居れば良いのかのぉ」


「終わるまでは居る必要は無いけれど、それでも夜会の半分以上はいないとね、でないとこの夜会は王家が居る価値の無いモノって噂になってしまう」


「王主催なんじゃがのお」


「だからこそ、だね」


「面倒じゃのぉ」


 暇つぶしにとその話を詳しく聞けば、まだ公爵家だった頃より昔からある慣習のようなものらしく、体調不良など特別な理由なく早々に主催の家が宴から帰ると出席してきた者が問題を起こしたと見られるそうだ。

 当然必ずそうみられる訳では無いそうだが、余計な波風は立てないにかぎる。

 幸いワシとクリスが話していたおかげか、野心ある者でも仲良くしてる所に入ることは出来ないとみえ、夜会の終わりまで殆ど煩わせることなくつつがなく過ごすことが出来たのだった……

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