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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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931手間

 連日アイオやライトと遊んでいたいがそうもいかない、ワシに具体的な仕事というものは無いが、それでもやらねばならぬことというのはたまに出てくる。

 直近で必要なことといえば、祝勝パーティの衣装やそれに合わせた服飾品を用意することだろうか。

 とは言えそれでもワシのやることは少ない、何せ些事は下の者が全てやってくれる、ワシがやることといえば精々が宝飾品を選んだり、採寸されるくらいだろうか。

 それでもこの商談を逃すまいとひっきりなしに商人はやって来るし、ドレスのデザイナーも血走った目を隠そうともせずに()()く訪れては、採寸したり仮縫いしたドレスを試着させてくる。

 そうなれば自由になる時間というものは意外なほどに少なくなる、それでも連日てんやわんやの大騒ぎな侍女や使用人ほどではないだろうが。


「それにしてもまぁ、よくもこれだけの数の物を毎度毎度集めれるのぉ」


「お褒めに与り光栄です、ご婦人方のお目を楽しませるのも我々の仕事の内と自負しておりますので」


 呆れたようにワシが言えば、目の前の宝飾品を専門に取り扱う商人はニコニコと、如何にも上機嫌といった様子で手を広げ、さぁ心行くまで見てくださいと言わんばかりに、目の前のそれだけで十分商品になりそうな箱に収められた、ネックレスなどの宝飾品を指し示す。

 ワシの菫青(きんせい)色の瞳の色になぞらえてか、青系統でまとめられたどれもこれも見事で、ネックレス一つとってもそれだけで家一軒建ちそうな気がする。

 そのネックレスを手に取りしげしげと角度を変えながら眺めれば、待ってましたとばかりに商人が口を開き、何やら大仰な口ぶりで石の産地やらを説明するがそのことごとくを聞き流し、ワシはネックレスを眺める。

 大振りのブルーサファイアを留める爪にまで、細かな装飾が入ったネックレスは見事な一品という他ない。

 他にもブルーサファイア、エメラルド、ルビーにダイヤモンドをこれでもかと使い、まるでステンドグラスかのように首元を彩るネックレスなどなど、見ているだけで実に楽しい。

 無論見るだけでも良いのだが、今回は気に入った最初に手に取った大振りのブルーサファイアをあしらったものと、色鮮やかな様々な宝石をちりばめたネックレスの二つを指差す。


「では、これとこれを貰おうかの」


「かしこまりました」


 この場で金品をやり取りする訳では無いので、手早く商品を仕舞い部屋を出る商人を見送ると、ふぅと息を吐き尻尾に埋もれるようにして座っているソファーへと背を預ける。


「今日はこれで全部かの?」


「はい、この後は面会等のご予定はありません」


 アニスに確認しさらに深く座り直す。

 ドレスの試着や宝飾品を見るのは楽しいが、こう連日来られると食傷気味になる。

 

「とりあえず明日からは、宝飾品の商人は居らんでもいいと思うのじゃが」


「そうでございますね、呼ぶとしてもドレスが出来上がってからでよろしいかと」


「んむ、ではそうしてくれ」


「かしこまりました」


 一先ずこれで来るたびに、余計な蘊蓄(うんちく)を披露していく者はいなくなった。

 ワシのことを慮って髪飾りや耳飾りを持ってこないのは良いのだが、その気遣いをもっと別の方向にも披露してほしいと、ソファーに深く座り込んだまま、大きく息をはくのだった……

 

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