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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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926手間

 宮殿にたどり着いた後はちょっとした式典のような事が行われ、その翌々日に伯爵以上の者だけを集めた祝勝パーティが開かれた。

 ワシにとっては実に退屈な時間であったが、騎士たちにとってはそうではない。

 騎士になるのは余程突飛な者でもない限り、家を継げない貴族の次男坊や三男坊などだ。

 家の規模によっては次男、三男くらいまでは当主の補佐ということで残れるかもしれないが、そこまで出来るのは伯爵や侯爵などの上位の中でも更に裕福な所だけだろう。

 そして騎士というものは若い頃しか出来ない、無論隊長などの役職持ちになれば違うだろうが、大抵の者は衰えを感じた辺りで引退し勤め上げた期間に応じて、巡り毎に国より支払われるお金でつつましく暮らすなどする。

 だが騎士は引退したとしてもまだまだ働ける、騎士を引退した後は護衛専門の傭兵などに再就職する者が多いそうだが、当然同じ事を考える者が多ければ必然的に雇われる時の給金は安くなる。

 そこで重要なのが上位貴族がやって来る式典、しかも今回は自分たち騎士が主役だ。

 要するに再就職先を今の内から探そうと、そういう訳だ。

 貴族にしても優秀な護衛や子弟の指南役を雇える機会というのはあまり無く、双方にとってこの祝勝パーティは重要だったらしい。

 戦勝の祝いと称して積極的に騎士たちに話しかけては、双方良い笑顔で話を終えるということを繰り返していた。


「その分というか、ワシらは暇じゃのぉ」


「仕方ないさ、今日は彼らが主役だからね。騎士を引退した後の働き口を斡旋するのも私たちの役目ではあるけれども、相当優秀でも無ければ私自身が紹介することも出来ない、多少優秀程度では王太子が紹介するには理由が弱いからね。だからこういう機会は私たちにとっても非常に重要だよ」


「ふぅむ、なるほどのぉ」


 話しかけやすいように立食パーティーという形式で、皆好きなところで談笑していたり食事に舌鼓を打っているのを、ワシらの為に用意されたスペースでソファーに座りのんびりと、果実酒などを飲みながら周囲をクリスと二人で観察する。


「しかし、こう見ていると見事に話しかけられるのを待っておるのが分かる者と、そういう事に関心がない者に見事分かれておるのぉ」


「今回の功績もあるし騎士を勤めている間に貯めたお金や引退後に支払われるお金で、贅沢をしなければ十分食べていけるからね。だから引退後は田舎でのんびりとする、なんていう者も多いんだよ」


「ほほう、なるほどのぉ」


 前職の経歴を生かして再就職したり、きっちりと働いたのだから後はのんびりなどと考えるのは、何処であろうと同じなのだろうと得心する。

 

「しかしクリスや、ここで祝勝パーティをしたのじゃから、もう一度祝勝パーティをする必要もないのではないかえ?」


「これはいわば騎士たちへのご褒美のようなものだからね、後日執り行うのは騎士たちが主役ではない、言葉通り戦勝の祝いとなる会なんだよ」


「ふぅむ」


 その時に神前街では祝勝のお祭りが開催され、国からも酒や料理などが振舞われるという。

 それはとても良いことだと思うのだが、神都に住む者は気位が高いのでお祭りなどどんちゃん騒ぎになるものなど以ての外、その代わりに祝勝パーティという名の夜会を開くのだが、当然ワシらもそこへ参加する事となる。

 正直、ワシとしてはそんな夜会よりもお祭りの方に参加したいが、流石に王太子の婚約者としては夜会に出ない訳にもいかない。

 なのでもう祝勝パーティはここでしたのだからもういいではないかとクリスに言ってみたが、すでに陛下が前日の式典で夜会を行う旨を大々的に通達しているしどだい無理だろうとは思っていた。

 それでも、万が一と思って言ってみたのだが、すげなく切って捨てられ、わざわざ口にした事で余計に意識する事となりワシはますます参加するのは面倒だと肩を落とすのだった……

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