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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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892手間

 クリスとクレスター子爵が盗賊団について話し合っていると、急にクリスが水を向けてきた。


「そういえば、セルカは街に居る盗賊団の残党の人相なんかは聞いてないかい?」


「さてのぉ、育てるとかなんとか言っておったから、若いじゃろうことは確実じゃが」


「あぁ、セルカの若いは、当てにならないね」


「じゃろう?」


 クレスター子爵は意味が分からず首をひねっているが、何にせよワシが聞いた話ではさして盗賊を追い詰めるに丁度良い話は無かった。


「あぁ、あとは街に送り込むのは皆男という話じゃったかな」


「それは」


 怪訝そうな顔をするクリスと、その意味を正確に理解し露骨に嫌そうな顔をするクレスター子爵。


「ま、悪逆非道を行い、贅の限り尽くそうとも、ワシに出会ったが運の尽き、今頃はどこぞの獣の腹の中じゃろうて」


「それはそれは、悪漢の最期としては少々贅沢かもしれませんな」


「何にせよ、盗賊団が壊滅した以上、今までより大きな被害は出ないだろう。無論、他に居なければ、だが」


 ワシとクレスター子爵がニヤリと笑いあう中に割り込むように、クリスがやれやれと頭を振りながら会話に入って来る。

 

「もちろん、この街を預かる者として微力ながら尽くす積もりでございます」


「あぁ、其方が居る内は安泰であろう事は街の活気を見れば分る、しかし、その後はどうなのだ?」


「私もそれが目下の悩みでして……」


 クリスが急に変えた話で、先ほどまで盗賊団なぞ何するものぞと息巻いてた男がしおしおと、今までの覇気など無かったかのように小さくなる。


「倅は十ほど前の巡りに亡くなり申した、子が産まれるからと息巻いて森などに行くものだから、倅の嫁も子を産んで産後の肥立ちも悪く、倅の死も相まって後を追うように」


「そうだったのか」


「倅は私が歳を取ってからようやくできた一人息子で兄弟も居らず、孫もまだ十で跡を継がせるなどまだまだ」


 如何にも疲れた老人といった様子を見せるクレスター子爵、さしてマナを持たぬヒューマンの中では相当高齢なのだろう、曲がった腰以上に愁眉がその年齢を浮き立出せている。

 

「ふむ、一先ず誰かに代理を立ててもらうことは出来ないのか? 本家であるクレスター侯爵家などに」


「それが出来れば良いのですが、丁度本家も当主が変わったばかりで代理になれるような年頃の者がおらず、配下も皆優秀ではありますが代官とするには些か」


「そうか」


 クリスとクレスター子爵、揃って考え込む二人。

 そんな二人を尻目に、寿命の短いもんは大変だなぁなどと呑気に考えながら、ワシは茶をすするのだった……

 

 

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