表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
907/3455

879手間

 夕食も食べ終わり、ゆるゆると寝支度を始める者と見張りの早番の者とに分かれる。

 といっても分かれるのは傭兵だけで、商人たちは皆寝支度に入っているのだが。

 それにしては見張りの者たちの緊張感が無いというか、それこそキャンプファイヤーを囲み、夜通し語り明かそうとでも誰かが言い出しそうな雰囲気さえある。

 まだ陽は落ちてないのでヒューマンの目でも周囲を見渡せようが、すぐに宵闇迫る頃となりそうなればヒューマンの目には何も見えなくなってくるだろう。


『おぬしら、そんなにのんびりしておって良いのかえ?』


「ん? あぁ、どうせこの辺りは森も遠いから黒いオオカミは出ねぇし、豚鬼(オーク)小角鬼(ゴブリン)でもようやく犬どもが使えるようになったからな、すぐに気づいてくれる」


『ふむ』


 傭兵の一人が話しつつ顎で示した方向を見れば、周囲を確認するように首を巡らしていた犬たちが、ワシが見ているのに気付き、まるで人の如くペコリと会釈する。

 そしてそそくさと、さぼってるのを上司に見つけられた部下の様に、それぞれ分かれさぼってませんよと主張するかのようにキビキビと動き始めた。


『ワシがおるから大丈夫じゃと思うがの』


「まぁ、それでも契約って奴だ、万が一もあり得るしな。それに見張り順で体を慣らしてるからな、下手に変えると体調を崩しかねん」


『ふむ、何とも軟弱なことじゃ』


 たった数刻寝るのがズレるだけで体調を崩すとは、何とも情けないと内心肩をすくめれば、話していた傭兵もその雰囲気を感じ取ったのか、わざとらしいコミカルな様子でやれやれとジェスチャーをする。

 それにワシがいるのだ、そうそう豚鬼(オーク)どもが近付いてくるとも思えないし、万が一来たとしても豚鬼(オーク)なぞ物の数ではない。

 だからといって全てワシに丸投げされても困るが。

 そんな事を考えつつ、その場に伏せくるりと丸まれば、おずおずとそこへシャーロットがやって来る。


「セルカ様、その、よろしくおねがいします」


『んむ、安心して寝るがよい』


 そう言ってシャーロットはワシの丸まった中心へと入って来る。

 なぜそんな事をしているのかと言えば、先に言った通りシャーロットがここで寝るからだ。

 シャーロットが寝るにあたり、傭兵や商人どもがこぞって自分の寝るテントを一緒に使うといいと誘ってきたのだが、当然そのような誘いはワシが全てばっさりと断ってやった。

 考えるまでも無い、誰がむくつけき野郎どもの中にシャーロットを放り込むというのだ、そもシャーロットは盗賊団から救い出したばかり、今まで特に問題なかったとは言え男所帯にどんなトラウマを抱えているか……。

 一人ここまでの経緯を思い出し内心憤慨していると、シャーロットが恍惚の声を上げ、ワシは我にかえる。


「やっぱりすごく気持ちいいです」


『んふふ、そうじゃろうそうじゃろう』


 腹側の毛は自慢の尻尾に負けず劣らずのもふもふ具合、ここに来るまでに何度かそこで同じ様にシャーロットは寝ているのだが、毎度毎度シャーロットは気持ちよさそうに過ごすのでワシの機嫌はすぐに上向きになる。

 恍惚の声をあげていたシャーロットも、ここに来るまでにやはり相当疲れていたのだろう、すぐにその声は寝息へと変わりワシは彼女を起こさぬよう、そっと焚き火の光から彼女を隠すように尻尾で覆い、ゆっくりとワシも目を閉じるのだった…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ