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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
9/3371

9手間

クッカークッカーという何かの鳴き声で起きる。まだ日は昇ってないようだ。

んぁーと伸びをして、クッカーという鳴き声でそういえば異世界だったなぁ、なんてひとりごちる。


寝ぼけ眼で部屋を出て受付に行くと、受付にいたおばちゃんが、


「朝食はもうちょっとかかるよ。裏手の井戸で顔を洗って目を覚ましてきな」


奥のほうにある扉を指さしてそう言うので、その扉から出ると、

中庭の片隅に井戸とクッカークッカーという謎の鳴き声のする小屋がある。

どんな生き物がいるかとワクワクしながら中をのぞくと、

鶏がいたよく見ると4本足の鶏がクッカークッカーと鳴いている。

い、異世界ぃ…なんて思ってると突然頭をぽんぽんされ、


「こいつはシェフって鳥だ。肉や卵がうまいんだぜ」


なんて突然声をかけられびっくりして、


「ぴゃん!!」


なんて変な鳴き声を発しつつ跳ねて距離をとると、

こっちもびっくりしたって顔をし、バツが悪そうに頬をかくアレックスが立っていた。

すまんすまんといいつつ井戸に向かうので、そういえば自分も顔を洗いに来たんだと

一連の事で目はすっかり冴えたけれども、顔を洗えば冷たい井戸水が実に気持ちよかった。


待っていてくれたアレックスと共に宿に戻ると、朝食の用意ができたとのことなので、

二人で食堂に行くとちらほらとすでに宿泊客が朝食をとっていた。


朝食はおそらくシェフの目玉焼きに葉野菜とハム

根菜のスープに黒いパン、そしてコーヒーっぽいお茶

黒パンはかったいのでスープにひたして食べると良い、と教えてくれた。


朝食を食べ終えて、さてギルドに行くかとアレックスが宿を出る様子なので、荷物は?と聞けば

自慢げに腕輪を叩く。そういえばギルドに登録すれば収納の腕輪が借りれるんだっけ。

ただし四等級からな、と続ける。五等級は寝泊り出来るだけの無料のギルド宿に泊まり、

そこに荷物を置いて狩りに出たりするらしい。ただし一月以上狩猟報告がないと、

宿の荷物はすべてギルドが接収する事になるから気をつけろよ、とのこと。


四等級になるとギルド宿に泊まれなくなる代わりに腕輪が貸し出され、

そこに荷物をすべて入れて、普通の宿に泊まるようになる。

荷物置きっぱなしは空き巣の被害にあうから、そういう風になったらしい。


そんな話をしていると、ギルドについたらしい。弓と剣と杖が重なったものがギルドの看板だ。

これはどこの街でも変わらないから覚えておくといい、と言いつつ、

ギルドの扉を開けて中に入っていくアレックスを慌てて追いかけると、

日がやっと昇り始めた早い時間帯だが、結構な人数が中にいて、

即座に耳や尻尾に好奇の視線が、そして好色な目線が飛んでくる。主に胸に。

ポンチョの前をしっかり閉じて、受付に進むアレックスに着いていく。


「この子の登録を頼む」


とアレックスが受付嬢に話しかけると、


「宝珠はありますか?見せにくい場所にあるのでしたら別室へどうぞ」


見せにくい場所ってどんなとか思いつつ、ポンチョをめくって肩の宝珠を見せる。

確認しました。ではこちらに記入してください。代筆は必要ですか?

と聞かれたので必要ないと答え、ペンをとり用紙に記入する。


名前:セルカ

年齢:12

種族:獣人

洗礼日:

洗礼教会:

宝珠箇所:右肩

宝珠色:漆黒に赤のオーラ

宝珠能力:魔手


獣人なので洗礼関係の項目は未記入でお姉さんに返す。

お姉さんは魔手?とぼそっとひとりごちるがすぐニッコリと


「このまま登録も出来ますが五等級となります、一応実力を示すものがあれば

 飛び級試験を受けられますがどうしますか?」


と聞いてくるので、収納の腕輪から魔物の爪と魔石を取り出す。

お姉さんがこの収納の腕輪はどちらで?と聞いてきたので、

里でもらったと答えれば、それ以上聞いてこなかった。獣人の掟便利。


今度は爪と魔石を見て、ギルド長を呼んできますので少々お待ちください。と言い奥へ消えていく。

お姉さんが戻ってくる間、アレックスが魔手ってなんだ?とか、

こんなでかい魔石持ちを狩れるなんてやっぱりすごいな、なんて騒ぐものだから、

またもやギルド内の注目を浴びる。お約束なチンピラはアレックスが居るからか、

絡んでこないのだけは幸いか…なんて生返事をしつつ待っていると、


熊って感じの雰囲気の、背がびしっとしたおじいさんがお姉さんを伴って出てきた。

この熊がギルド長なんだろう。爪を魔石を見て目を見開いたと思ったら、

何故かニヤニヤとして、試験官を連れてくるといってすぐに奥に消えていった。


「えっと、ギルド長が認められましたので、飛び級試験の試験場にお連れしますね」


と言って受付カウンターからでて別の場所にある扉へ向かうので後についていくと、

アレックスはともかく、ギルド内のみんなまで付いてきた。

えっ、と驚いていると、飛び級試験はいい見世物なんだと教えてくれたが…解せぬ。


体育館くらいの広さの場所に出ると、ではこちらでお待ちください。とお姉さんはギルドへ戻っていった。

アレックスは、じゃあがんばれよ、と見物席に向かっていく。

見物席があるってことは、本当に見世物としてあるのかのぉ…なんて思っている間にも席は埋まっていった。


そうこうしてるうちに、ギルド長が一人の青年を連れて出てきた。

青年はワシを見た瞬間、はぁ?って顔をしてギルド長に食ってかかっている。

ワシの耳は実によく聞こえるので、オレが何であんなガキの相手をとか、

実にわかりやすい、天狗になっている人特有の言葉が聞こえてくる。


チンピラのお約束はなかったけど、こういう方向できたか…と頷きつつ、

試験用の刃引きされたナイフを受け取る。相手は同じく刃引きされた両手剣のようだ。

特殊な結界を張るから、致命傷に当たる攻撃を喰らった場合には結界の外に即座にはじき出されるが、

致命傷未満のケガはするから気を付けろ、あと結界の外側までは魔法などの影響は及ばないから

全力でやれ、とギルド長が叫んでいるが、その間にも青年はなんでオレが、とかこんなガキが、とか

ブツブツ言ってるのでさすがにイラっとして、


「このワシ相手に随分と余裕じゃの、胸を貸してやるから存分に挑んでくるがよい」


とポンチョをしまいナイフを構えると、外野が俺にも胸を貸してくれーとか野次を飛ばしてくる。

肝心の青年は明らかにキレてるようで、ぶっ殺してやるとか

二度と立ち上がれないぐらいボロボロにしてやるなどと危ないことをブツブツつぶやき始めた。


ギルド長の「始め」の合図とともに青年が突っ込んでくる。

それに対してワシは、さてどう手加減してやろうか…と

青年が知ったらこれまたキレそうなことを考えるのであった。

ワシ・・・ワシ・・・ワシ・・・

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