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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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809手間

 肩こり、腰痛、その手の体調不良とは生まれ変わってこの方無縁だが、ぐぐっと両手を握り背と腕が一直線になる様に伸ばせば、背筋のコリがほぐれたようなそんな気さえする。

 そのまま首筋に手を当て首をぐるぐると回せば、ボキボキと首が鳴る幻聴すら聞こえてきそうだ、無論こんなはしたない姿クリスには見せられ無いので一人部屋に引きこもって、だ。


「ふぅ、ワシも歳という事かのぉ」


 当然一人であるからワシの言葉にツッコミを入れる者も、解せぬと文句を言う者も居ない。

 クリスやフレデリックが騎士たちと話があるからとふとできた隙間時間、歩き回ろうにも一応戦時下の砦であるので皆ピリピリしており楽しいモノでも無い。

 ここは砦であるので専門的な設備こそ無いが、一通り傷薬などを作る導具はあるので暇つぶしついでに作ろうかと向かったら、専属の薬師に頭で地面を叩き割らんとする勢いで丁寧にお断りされたので、結局無聊を慰める手段も無く部屋でぼうっとしている。

 そこでふと窓が目に入り、何となしに近づいて外を眺めれば、休憩中なのだろうか鎧などを脱ぎ地面に座り込んで雑談をする数名の騎士か兵の姿。


「いやぁ、まいったまいった」


「何が参っただよ、てめぇのせいで俺たちまで巻き添えくらったじゃねぇか」


 聞こえてくる如何にも悪友的な仲の良い同僚といった雰囲気の会話に、折角だから普段彼らはどんなことを話しているのだろうかと窓辺に椅子を寄せ、腰かけて窓枠に頬杖をつき彼らを眺める。

 盗み聞きとは品の無い事ではあるが、幸いなことに貴人用の部屋だけあってこちらからは彼らの姿がよく見えるが、彼らからはワシの姿は見えないのでバレることは無い、何より寒さ対策の分厚い窓のおかげで怒声でもない限り普通は外の会話など聞き取れず誰も聞かれているなどとは考えない。


「何で剣の手入れしてなかったんだよ」


「いやいや、ちゃんとしてたって。けどよ、まさか豚鬼(オーク)の棍棒と打ち合って折れるとは思わないじゃないか」


「だから手入れしてなかったって怒られたんだろ」


「いや、まぁ、そうだがよぉ。お前らがいなけりゃヤバかったのも分かるんだが……」


「あぁ、話が長いよなぁ」


「説教に限らずな」


「年取ると話が長くなるってのは本当なのかねぇ」


 よくある上司への愚痴だったものが急に方向を変えグッサリとワシの胸へと突き刺さる、彼らはワシに言ったつもりなど微塵も無いだろう、ただワシに身に覚えがあるだけで。

 しかし、自分で自虐的にいうことは多々あれど、人から言われる事など滅多に、いやまずない。そもワシの容姿を見て年寄りだなんて思う訳がないのだから。


「うぅむ、今度から話の長さには気を付けるかのぉ……」


 人知れず勝手にダメージを負ったワシはよろよろと椅子から立ち上がり、ふらふらと部屋の中を歩くとぽすんと音を立てうつ伏せにベットへと倒れこむのだった……

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