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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第三章 女神の願いの片手間に
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78手間

 大通りを襲い来る魔物を薙ぎ倒しつつ駆け抜ける。と言っても少し早めの駆け足程度だが。


「なぁ、セルカ今更なんだがよ。なんで俺ら走ってんだ?探索なら歩いて見て回ったほうが良さそうな気がするんだが」


「ふむ、そうじゃの…とりあえず周りを見てみい。かなりの数の魔物どもが集まっておる、まずこやつらが何処から来ておるかが問題じゃが、来る方向から見て街の中心辺りが怪しいじゃろう」


「確かに後ろからはさっぱり来ないな」


 下手に周囲に被害を与えるわけにもいかない為に今回は技を使用していないが、ここに居るのは通常の魔物では無い様で、剣の一振り爪の一撃で容易く塵と化している。それこそ会話をする余裕があるほどに。


「弱いとは言え数が数じゃ、囲まれては進退窮まると言うもの。なればさっさと動いて数が減らせるならば減らして、それから探索したほうが楽と言うものじゃろう?」


「まぁ、確かにそうか」


「今のところあの四人組も問題なく着いてきておるみたいじゃしの」


 ちらりと後ろを振り向くと、現在ワシを先頭に左右斜め後ろにアレックスとジョーンズが、そのさらに斜め後ろに女性四人組の内剣士二人、セシルとシアンという名の二人が三角形の陣形を取っているのが見える。

 その三角形の内側にカルンとインディ、残りの魔法使い二人ライトとアイオの魔法使い組を囲むようにして魔物の群れの中を突っ切っている。

 前からくる魔物は剣士が薙ぎ払い、追いすがる魔物は魔法使いが地雷の様な魔法を使用して吹き飛ばしている。


「屋敷の門は開いておる様じゃの、手間が無くて重畳」


「閉まってたらどうしたんだ?」


「なに、門が開くだけよ」


「…閉まらなくなりそうだな…」


 少し力を込めて前方の魔獣の群れを一撃で薙ぎ払い、アレックスに向かってニヤリと笑うとアレックスは呆れたように一瞬、肩をすくめる。


「冗談はさておき、門に着いたらワシ、アレックス、ジョーンズが門の外で魔獣を止めるのじゃ。魔法使いはそのまま門の中に、セシル、シアンの二人は門の内側を警戒じゃ!」


 了承の声が聞こえたため駆ける速度を上げ一気に門へと到達する。ワシら三人は門の手前で足を止め後ろを振り返ると、その間を残りの者たちが駆け抜けていく。

 前後が入れ替わり魔法使い組を剣士組でサンドイッチにする形となる。


「屋敷の方に人はおるかの?」


「いないわ、まだ西の方はたどり着いてないみたいね」


「ならばたどり着くか光弾が上がるまではここで防衛じゃ!」


「わかったわ!」


 遠目から見たときは他の建物の陰でよく見えなかったが…この屋敷、かなりでかい上に頑丈そうだ。普通、他の街で見る屋敷などを囲むのは背が高いとはいえ、ただの鉄柵と目隠し程度の植木程度なのだが、ここは街の外周を囲むもの程ではないものの、造りはそれほど遜色ないほどの石造りの非常に頑強な防壁となっている。

 この頑丈さ…確実に反乱を恐れてだろうと思うが、今は逆にそれがありがたい。門の大きさがボトルネックとなり外の魔物共も一斉には襲い掛かかれず、距離が離れているものをカルン達が間引き、近づいたものをワシらが倒す。

 外で戦っている時にも門の内側、屋敷方面からもそこそこ襲ってきているようだが、それは問題なくセシル達が仕留めているようだ。

 暫くそうやって戦っていると、魔物の群れをかき分けて、別のパーティが駆け寄ってくるのが見える。


「はよう門の中に!」


「助かる!」


「よし、カルンや!頼んだのじゃ!」


「はい!『エクスプロージョン』!!」


 中に西側へいったパーティが入ったのを確認した後カルンに声をかけ即座に魔法を使ってもらい、門の前に居る魔物をワシらを巻き込まない程度に殲滅する。

 一瞬魔物が怯んだ隙に門の中に入り一気に閉める。何とか門の隙間から入ってきた魔物はワシが即座に叩き落とす。門を閉める重労働は男どもにやらせておけばよいのじゃ。


「ふぅ、これで外からは大丈夫そうじゃの」


「助かりましたよ、まさか中にこれほど数が居るとは思いませんでした」


 それでも撤退と言う判断をしなかったのはさすがと言うべきか、外からはガンガンと門に体当たりでもしてるかのような音が聞こえるが、しばらくしたら諦めたのか静かになった。

 その間にも屋敷の方から魔物が襲ってくるが、数は少ないので特に問題は無い。アレックスらが警戒している間に西のパーティリーダーと話し合いをする。


「西はどうじゃったのじゃ?東は防壁に大穴が開いとる程度で特に何かというものはなかったのじゃが」


「こっちは門が開いていたので穴などは見当たらなかったな。門から西にある森へ向かって魔物が駆けて行っているくらいだろうか、恐らく向こうの街に来ている魔物はここからだな」


「ふむ、東にも魔物はおったが穴から入っておる様子なぞなかったのじゃが…となると魔物どもはここで生まれておるという事かの…」


「確かに南も門は閉まっていて穴などの侵入口も無かった、あとは北くらいだろうな…」


「北も確認せねばならぬが…ワシはこの屋敷が怪しいと思うのじゃがのぉ…」


「ほう…?それはどうして?」


 興味深そうにいつぞやのレストランで会った壮年のハンター、マッケンが食いついてくる。


「街に入った時に感じた不快感が特にここは強いのもあるのじゃが…あとは勘…じゃな」


「ははは!女の勘か!そいつは怖い、ならここを調べて原因があればそいつを排除、難しいようであれば情報を持ち帰って改めて大人数でといったところかな」


 そうじゃのと頷く。戦闘中は気付かなかったが明らかにここだけ穢れたマナの濃度が高い。ただ、ここで生まれているなら外より個体数が多そうな気もするがそれは後々考えればいいだろう。


「しかし、撤退するにしても外は魔物であふれてる、どうするつもりなんだ?」


「なに、どうせ誰も居らぬ廃墟じゃ、多少壊れたところで誰ぞ文句も言うものか」


「おぉ、怖い怖い。うちのかみさんの次に怖いぜ」


 ニヤリと笑ってやれば大げさに怖がるがそれでも一番に奥さんを置くあたりどれだけ怖いのだろう…。


「ワシもカルンにそう思われんよう気を付けねばの…」


 誰にも聞こえぬようひとりごち、戦っていたアレックスらにこの屋敷の探索をすることを伝え先へ向かうことにする。


「まずは裏に周ってそれから中の探索じゃの」


 変なものでも無ければよいがと屋敷を眺め、一人そう思うのだった…。






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[気になる点] 余事:ら 「なに、どうせ誰も居らぬ廃墟じゃ、
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