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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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781手間

 だっかだっかと蹄が雪を蹴り上げ白に土の茶が混じる道を往く。

 往く道はなだらかな上り下りがある平原、左手の遥か遠くには小国群と神国を隔てる勇壮で険しい山々が並び、小国群の情勢が安定しているのならば登山家がこぞって登りそうな、そんな美しい風景が続いている。


「確かもう少しで着くんじゃったな?」


「そうらしいけど」


 流石に馬車に乗ったままは現地に着いている者たちに印象が悪いと、今朝から馬に乗り換えて戦の本陣に日暮れにまでは着くだろうという距離まで既にワシらは来ているらしい。

 空は千切れた雲はあるものの晴天で日暮れまでに天気が崩れることは無いだろう、そのせいか戦地が近いというのに騎士たちは気を引き締めてはいるが緊張している様子は無い。


「うぅむ、戦はまだ始まっておらんのかのぉ」


「途中で受けた伝令では、もう何度か衝突してるって話だったじゃないか」


「いや、そうなんじゃがの? こう穏やかではのぉ。それに小国群の奴らは突撃してきてもすぐに引いて死者すら出ておらんという話ではないかえ」


「確かに、変な話ではあるけど……」


 双方人間、当然死にたくないし出来れば怪我もしたくないと言うのが本音と言うか当たり前だろう、とは言えこれは模擬戦闘などでなく戦だ、だというのに骨を折るなどという重傷を負った者は居るが致命傷を負った者は居ないと言うではないか。


「本当に何がしたいんじゃろうなぁ、土地が欲しいでも金が欲しいでも宗旨が違うなんかが戦の理由じゃろうが、まだ何にも言って来ておらんのじゃろう?」


「そうだね、そこは必要ないと伝令を出してる者が判断してるだけかもしれないけど」


 戦をけしかける理由なんて土地、食料、金、宗旨がらみと言ったところが関の山だろう、故にあえて伝える必要も無いとしたのか、何にせよ相手が攻めて来たのだ理由がどうあれ今のところ叩きのめす以外の選択肢はない。

 それからまたしばらく馬を走らせ陽が落ちる先がほんの少し色づき始めた頃、左手の山々が低くなり途切れ始め、目の前の平原が丘陵へと変化してきたころ前から流れてくる風に微かな血の匂いを感じた。


「ぬっ!」


「セルカ、どうしたの?」


「風に血の匂いが混じっておる、戦闘中かも知れん」


「全体、駈足!」


 ワシの言葉にいち早く反応したのはフレデリック。若干気が抜け始めていた騎士たちも一気に気を引き締め直し、輜重部隊を護衛する者たちを残し速度を上げ走り出す。


「クリスや、ワシらも急ぐのじゃ」


「ああ!」


 ワシとクリスも彼らに僅かに遅れ丘陵の向こうへと、手綱をぴしゃりと響かせ速度を上げるのだった……。

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