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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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743手間

 ニヤニヤとするワシと対峙しフレデリックは苦々しい表情のまま、何かを探すように視線を泳がせ何かに気付いたのかハッとした表情でワシを見据える。


「主が従の伴侶を見繕って下さる、良く聞く事であり大変名誉なことなのですが……私はセルカ様にお付きするよう申し付けられておりますが、あくまでも私の主は陛下でございますので」


「ふむ、そこんところどうなのじゃ、クリス」


「えっ? う、う~ん、父上も流石に家を持たせるという事は言ってなかったけど」


 この中で最も陛下に親しいクリスの言葉に、フレデリックはそれ見たことかと言わんばかりに目を輝かせる……が。


「フレデリックが結婚しないと自分たちも結婚できないから、どうにかしてくれという嘆願書が来てると嘆いてたのは聞いたかな」


 数拍置いて続けられたクリスの言葉に、フレデリックの目は後ろから突然首を刎ねられた獲物の様に面白いほど光を失っていく。


「嘆願書……ですか」


「そこかえ」


「嘆願書だから流石に誰からのモノかは言えないけどね、内容としては上司が結婚しないから自分も相手がいるけど結婚し辛いとかだったり、結婚しても公表し辛いから内々のうちに隠れるようにするしか無く上司にも相手にも後ろめたいとか」


 間接的ではあるのもの、嘆願書という明確な形をもってこの人に迷惑してますという話が出てきたのだ。生真面目なフレデリックとしては、直接言われるよりも嘆願書という正式な文書に起こされての抗議は中々に効くのだろう、容赦なくクリスが追撃してるせいもあるが、実際にそんなことは無いのだがどんどんとフレデリックが色を失っているように見える。


「しかし、嘆願書とは……よほど追い詰められておるのじゃのぉ。それにしてもフレデリックはこの嘆願書のことを知らんかったのかの……いや、聞くまでもないのぉ」


「普通ならフレデリックが纏めて父上に提出するだろうけど、嘆願書の内容がフレデリックに関するモノだからねぇ。今回は副団長が纏めて父上に持ってきたらしいよ」


「それにしても、多少慮ることはあってもそこまで気にせんでもよい事じゃろうに、近衛どもはフレデリックに負けず劣らずの生真面目ぞろいじゃなぁ」


「そうでなきゃ、近衛は務まらないよセルカ」


 確かに真面目でなければ近衛という重責は負いきれないか、しかしそれでも……犬では無いがやはり部下の性格は上司の性格に似るのだろう、嘆願書を提出するほどに自ら追い詰められなくてもいいのに……。

 いや、生真面目だからこそ結婚という一大事を大手を振って行う事が出来ないのを憂いてしまうのだろうか。


「何にせよじゃ。という事でフレデリックやすぐに結婚しろとは言わぬ、じゃが結婚せぬという選択肢は無いのじゃ。そうじゃのぉ、クリスとワシの結婚式までに相手は見つけておくことじゃ」


「かしこまり、ました。しかしお言葉ですが、私はこれまで騎士の職務一筋で生きてきました、一体どうやって相手を見つければ……」


 嘆願書が来ては陛下から直々に結婚しろと命令されるのも遠くない話、ここまで来ては流石のフレデリックも折れたのか、乗り気というよりも諦めに近いだろうが相手を見つけることにしたようだが、フレデリックの懇願にも近い吐露にワシらもさして見つけようと思って見つけた訳でも無し、どうしようかとクリスと二人そろって首を傾げるのだった……。

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