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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第三章 女神の願いの片手間に
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74手間

「はぁ…おぬしら雁首揃えてその様な辛気臭い顔しているのじゃ。アレックスなぞ、先ほどまで実に嫌らしい顔しておったではないか」


 情けないオーラを振りまいてる三人の座るテーブルに、昨日と同じように声をかけつつ座るが、その声には呆れの色が多分に入っていた。


「おぉ、セルカかおはよう。カルンとやっとくっついたんだってな」


「や、や、や、やっととはどういう事じゃ!」


「いやいや、マジで自覚なかったの?ここ最近なんざ特に"素直になれない恋する乙女"って反応ばっかりだったじゃないか」


「なっ、なっ、なっ、なっ…⁉︎」


 顔を真っ赤にして裏返った声で聞き返せば多少元気を取り戻したかの様にジョーンズがからかってくる。

 ワシってそんな風に見えていたのか?など頭を抱えてブツブツ呟いていると先ほどまでの暗い雰囲気は何処へやら、三人ともニヤニヤしていた。


「ぐぬぅ、ワシの事はよい。おぬしらこそ先ほどまで落ち込んでおったくせに嫌らしい顔をしおってからに。大方心底どうでもよい事で落ち込んでおったのであろう?」


「ぐ、いや。セルカやカルンには関係無い事だし?人生に関わることだし?下らなくないし?」


 ジョーンズはそう言うが盛大に目が泳いでいる。ワシとカルンに関係して人生にも関わるとは…あぁ恋人か…しかし、今まで聞いた話の中に浮ついたものもあったしそこまで動揺することなのじゃろうか?


「大方恋仲がどうのこうのって事じゃろうが、おぬしらだって一人や二人おったという話をしとったではないか…」


「えっ!あー、あぁそっか…セルカは里出身だったな…そりゃしらねーかぁ」


 頭の上にクエスチョンマークを浮かべるワシを尻目に三人とも頭を抱えている。


「えっとな、男性が跪いて左手を胸に当てて右手を差し出すってのはな…」


「結婚…の申し込みですよ」


 頭を抱えているジョーンズの代わりにアレックスが理由を言いかけたが、背後からかけられた別の言葉がその意味を教えてくれた。


「カッ、カルン⁉︎」


「もしかしてセルカさんは意味を知らないから右手を取ってくれたのですか?」


「いや、それは…その…えっと…」


 悲しそうにするカルンに何か言おうとするが、手を口の前でもじもじさせて段々と声が小さくなってしまう。


「それじゃあ…意味も知ったことですし、改めて」


 一度目を閉じ思わず見惚れてしまうほどの微笑みをしたカルンは、ワシの前に跪きまっすぐと目を見つめ左手を胸に当て右手を差し出してくる。


「セルカさん、僕と結婚してください」


「うぇっ…はふ………はい………」


 衆目の前で何を!なんて言葉も吹っ飛び蚊の鳴くほど声で了承を伝え、その右手を取るといつの間にか集まってきていた他のハンター達から祝いや(そね)みの声をかけられる。

 椅子に座ったままだったから大丈夫じゃったが、立っていたら恥ずかしさのあまりふらっと倒れていたかもしれぬ。

 満面の笑みのカルンを見て、最初はおどおどした頼りない男だと思ってたが、いつの間にこんなにも惚れたのだろうかと考えたがそんなことは如何でも良いかとワシも笑顔で応える。

 満足したのかいつの間にかひとしきり騒いでいた周りのハンター達は居なくなり、アレックスら三人はまた頭を抱えて落ち込んでいた。


「なんじゃ、おぬしらは」


「先を」


「こされた」


 ジト目で睨むとアレックスとジョーンズが呟きインディもため息で答える。


「いや、おぬしらも先は長いのじゃから、そこまで落ち込むことでもなかろう?」


「後輩に先を越される気持ちがわかるか?等級とかは良いんだよ実力とか才能だからさ!だけどよ結婚となると結構心に来るものがある!」


「そうかのぉ?わかるような?わからんような?」


 左右に揺れるように首を傾げて、確か前世で先に結婚したやつが居るがそこまで落ち込まなかったような?と考える。


「そりゃお前自身が先を越された原因だからな!はぁ、どっかいい女は居ないものか…出来れば宝珠持ちがいい」


「ふむ?ここだけでもざっと見るだけで女性ハンターは多いようじゃし、がんばればよいのではないか?」


 アレックスの言葉に周りを少し見渡せば目に付くほど、それなりに女性のハンターと言うのは多い。


「ハンターの女はなぁ…みんな気が強い。尻に敷かれそうで嫌なんだよ。セルカはかなり気が強いが、意外と男を立てそうだよなぁ…」


「むぅ…そりゃ…まぁ…カルンの為なら…」


「まさかしおらしいセルカなんてモンを見る日がくるとはなぁ…」


 ちらちらと隣の席に座ったカルンを見てつぶやくと、しみじみとアレックスもつぶやく。


「そうだ、ここでの問題が解決したら、サンドラさんには悪いのですが、一旦カカルニアに戻りませんか?僕の両親にセルカさんを紹介したいですし」


「ん?俺は構わないぞ。同じ領内ならともかく、別の領地まで行ってわざわざ言祝ぐなんざ普通はしないからな、誰も文句なんざ言わねぇよ。後で行ってお前らの結婚報告して驚かすのもいいな」


「俺も別にいいぜ」


 アレックスに続きジョーンズとインディも頷いて同意する。


「む?やはり両親に報告するもんなのかの?」


「そうですね、仲が悪いとか別の領地に住んでるとかでもない限りする場合が多いですね。そういえば、セルカさんの両親は里にお住まいなんですよね?」


「ん?んむそうじゃの、じゃからさすがに挨拶には行けんのぉ」


 両親と呼べるものは前世でしか居ないし、生み出したものと言う事であれば女神さまになるが、流石に会いには行けない。


「そうですか…セルカさんの両親にも会ってみたかったのですが」


「教会で祈れば良いのではないのかのぉ…届きそうな気がするしの」


 「この世界の女神」と「女神さま」が同一神物であればだが…。いや、あの女神さまならのぞき見していても不思議ではない。


「そうですね、世界樹がきっと想いを届けてくれますよね」


「それで…ですね…式は…そのたぶん両親が張り切って準備してしまうと思うので…」


 正直そのあとの事は覚えていない、いつか見た教会であげれればそれで十分と言ったのはかろうじて覚えているが、いつの間にか宿の自分の部屋へと戻っていた。

 戻ってすぐ寝台へと飛び込み、枕に顔を埋め足をばたばたと暴れさせて身悶えていたらいつの間にか眠ってしまっていた。


「ハッ!いま何時じゃ!」


 コンコンというノックの音に慌てて起きる。


「待っておれ、今開けるのじゃ」


 扉を開けるとそこには、食事の乗ったお盆を抱えたカルンが立っていた。


「夕食なんですが…二人で一緒に食べようと思いまして」


「そうじゃったか、立ったままもなんじゃ早う入れ」


 招き入れたはいいが日が落ち部屋が暗くなっていることに今更気づいて、慌ててランプに火を灯す。


「それとですね、アレックスさんが部屋とかテントは夫婦なんだから二人で使うようにしろと言われまして、今日から一緒に寝てもいいですかね?」


「夫婦…ふふふ、ふぇへへへ。ハッ!も、もちろんじゃ!嫌がる理由なぞ僅かもないのじゃ!」


「よかった…。それじゃあ、冷めてしまう前に食べましょうか」


 その後は二人きりと言う事もあり、思う存分いちゃいちゃした。

 眠りに落ちる…いや落とされる直前、考えたのはカルンすごいという事だった…。



セルカがこの世界に居る意味を女神の願い以外でもと思い書いたのですが。

予想以上に興が乗って話が長く長く…。


あとびっくりするぐらいセルカがちょろインに。

こんなはずじゃなかったのになー?

まぁ、恋ってこんなものよねと言う事で一つご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石にこれはキツくてギブ
[一言] 折角TS設定なのだから、元男性が男性に恋する違和感や葛藤を、沢山描いてほしかったです。また、イチャイチャさせられる相違なんかもあれば聞いてみたいです。
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