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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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588手間

 ある程度話は聞けたのでワシらは兄貴の牢を出て宮殿への帰りがてら、短い道中を護衛するというフレデリックらと話をする。


「下っ端と思っておったが意外と情報を持っておったのぉ」


「はい、見張りの配置や交代のタイミングなど、襲撃をかける際にかなり有利になるかと」


「ワシとしてはそのような事より、抜け道のような逃走経路が無いと分かった方が大きいがの」


「やはりセルカ様も同道なされるので?」


「うむ、当然であろう。人を魔物とするような非道な輩じゃぞ? ワシらが襲撃した際にその場に居る者たちを魔物にして、ワシらに嗾けてくるやもしれん。ワシ程では無いにせよ生半可な一撃では手傷一つ与えれんじゃろう、その手の輩に対処できるのはワシだけであろうしの」


「確かに膂力は凄まじいモノがありましたが、剣が効かなくなるのですか?」


「んむ、単純にものすごく硬くなるのじゃ。しかも魔石を体から除かん限りは首を落されても死なんのじゃ」


「しかしセルカ様は牢で魔物を討伐なされた際に、真っ先に首を狙っておられましたよね?」


「それはじゃな、首を落した程度では死なぬが動きは止まるのじゃ、といってもしばらくすれば首なしでも動き始めるがのぉ」


「なるほど」


「と、そうそう忘れるところじゃった。アレの薬の手配を頼みたいのじゃが大丈夫かの?」


「彼が言うには、道案内の間は十分に持つ量の薬はあるはずですが?」


 フレデリックは暗に彼らはそこまでだと言っている、無論彼が非情なのではなくそれが当たり前、むしろ話を聞き終わったからと即刻処刑しないだけ随分と有情であると言って良いだろう。

 何せ彼らは暗殺者、今回見張りなどにも被害が皆無だったとはいえ、場合によっては何人か命を落としていたかもしれないのだ。


「まぁアレじゃ、言い方は悪いが薬さえどうにかすれば、ワシらが彼らの命を今度は握るのじゃ裏切りはせんじゃろうて」


「ですが、常に作って無いとはいえ薬師であれば作れる薬なのでしょう? 市井で手に入れてしまうことも可能なのでは……?」


「その点については大丈夫じゃ、実はあの薬のぉ……薬師に作ってくれと頼むのは薬師に対しての侮辱に当たるのじゃ」


「え? 薬を作ってくれと言うのがですか?」


 薬師というその名の通り薬を扱う者に薬を作ってくれと言うのが侮辱、そうワシが言ったことに余程驚いたのかフレデリックの足が思わず止まる。


「んむ、それはあの薬を作る理由にあるのじゃ。一言でいうとじゃな、見習いが作る薬なのじゃよ。二つに分かれておる薬じゃが元々同じ花の花びらと球根を使った薬での、乾燥、抽出、蒸留、煉りなど薬師がする必要のある工程を通して出来る薬でのぉ、しかもその工程の良し悪しで水薬と粉薬を混ぜた時の色合いが変わるのじゃ、練習に試金石にと実に都合の良い薬なのじゃな。しかもまず普段使う事もないからの、故にこの薬を作ってくれと言うのは」


「なるほど、相手の技量を見くびっているという事になるのですね」


「うむ、そうじゃ。さらに薬の材料になる花は一本植えれば短い期間で勝手にポコポコ増えるからのぉ……見習いが大量に消費してもまず大丈夫という奴じゃ」


「なるほど……」


 そもそも普通の人はこの薬があることをまず知らない、知っているのはこの薬の意味を知っている者に限る、だからこそ侮辱の意味を持つのだが。


「という訳での、まず勝手に買ってくるなど不可能じゃろうし、見習いがおるような所を調べて欲しいのじゃよ」


「わかりました、セルカ様のご命令とあらば」


 恭しく礼をするフレデリックに満足して頷き、その薬をひたすら作るのは地味に辛かったなぁ……と遠い目をするのだった……。

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