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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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576手間

お互いの剣先で相手をけん制する様な間合いで対峙しつつ、襲撃犯二人の容姿を観察する。

二人の姿は一言で言えば全身黒づくめ、殆ど肌の露出が無い服に手袋、目の下から首までを覆う布を顔に巻きご丁寧に剣までつや消ししてある。

唯一色彩が異なるのは僅かに見える目元の肌色とエメラルドに輝く瞳だけ、髪の毛も黒色のせいで少しでも気を抜けば闇夜に紛れてすぐそこに居るのに見失いそうだ。

二人とも同じような目の色に髪の色なので血縁か、一度だけ聴こえた声から判断すれば一人は男なのは確実だが……。

服の色としなやかさを重視した体形のため体系からはもう一人がどうなのかは判断できない、ただ気になるのは二人の頭にある髪の色と同じ三角形のピンと立った髪と同じ黒い耳。

なるほど黒猫の獣人であれば宵闇に紛れて行動するも鉤縄一本で城壁を登る様な曲芸じみたこともお手の者だろう。


「解せぬの……何故獣人がワシを狙うのじゃ?」


二人はワシの問いかけに、まるでただの独り言を聞き流すように反応すらしない。

少しでも反応すればと期待していたのだが、小さくため息をワシが漏らした瞬間、四つのエメラルドの瞳が二つずつ左右に分かれるようにゆらりと揺れて闇に消える。

まさかこの期に及んで逃げたかと、右足をすぐにでも追いかけれるようザリッと擦りながら前に出せばワシの左、視界に入るか入らないかギリギリから寸分たがわずワシの首を狙い剣が振り下ろされる。

左足で地面を蹴り右へと避ければ今度は右側の闇からぬっと剣が現れる、それを後ろに跳んでかわせば左の剣が追い付いて来て、ワシの胸元目掛け鋭い突きを放ってくる。


「煩わしいのじゃ!」


だがしかし、ワシには届かず剣が伸び切ったところを刀を使い、ぐるりと相手の剣を巻き上げて弾き飛ばそうとしたが思いの外に握りが強く相手の体勢を崩す程度、しかしそれも好機とワシが攻める前にもう一人が剣を間に滑らせてきてフォローしてしまう。

合図も無しに流石の血縁と言いたいところだが、血縁という以上に鍛錬の跡が見える連携だ。


「ほんにおぬしら何者じゃ? 手心を加えておるとはいえワシとこうもやり合うとは巷にはなかなかおらんのじゃ、そんな者を使い捨てとはおぬしらの雇い主は実に豪放か、そうでなければただの大うつけじゃな」


努めて軽い口調で挑発してみるも、覆面のせいで表情は全く分からない。

先ほどの巻き上げに余程警戒心を刺激されたのか、細かく速いを心掛けた一撃離脱を繰り返すようになったお蔭で避けるのが容易くなったのは良いのだが、挑発してもそこに何の乱れも無いというのは中々に面倒臭い、もしかしたらあの覆面の下は憤怒の形相かもしれないがそうであればさらに厄介な相手だ。

聖樹の近くの為に、ここいら一帯のマナが濃いせいでマナを見ることで相手の位置を知ることも出来ず、不愉快な気配のせいで肝心の襲撃犯の気配がかき消され足音も猫の獣人のためか殆ど聞き取れず、かろうじて風切り音とギリギリ見える剣筋を見切って避けている状態だ。

だというのに挑発でもブレない相手というのは実にやり辛い、生死問わずで倒すのであれば容易であるし根比べであればワシに圧倒的な分があるが、これほどの技量の持ち主だ音を上げる前にさっさと逃げ出してしまうだろう。

さてどうしたものかと眉間に皺を寄せれば、こちらが一瞬考え込んだのが分かっていたかのように暗闇から剣が躍り出てくる、しかしその程度の隙で剣に当たるワシではない、それをひらりと躱せば「ちぇいい!」と裂帛の気合いと共に大振りの一撃が間髪入れず飛んできた。


「とうとう焦れおったか、正に隙ありじゃ、な……に」


大上段からの振り下ろし、それを難なく躱された襲撃犯の一人の晒された首元目掛け生きてれば儲けものと柄頭を叩きこもうとしたその時、ワシの背中にドスりと剣の切っ先が突き刺さるのだった……。


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