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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
57/3463

55手間

 昨日あれだけ転がったりぶつかったりしたので、全身傷だらけ痣だらけを覚悟していた。

 テントの中に一人なのをいいことに、服を脱いで全身を確認したが痣どころかかすり傷一つ負っていないように見えた。


「む?確かに血は出ておったから、擦り傷ぐらいはあるはずなんじゃが…まさか、もう治ったのかの?」


 骨折など酷い負傷はしなかったにせよ、確かに怪我はしていたはず。確かに宝珠持ちは怪我が治るのは早いが、それでもさすがに一日二日ですぐ治るようなものでもない。


「ふむ…まぁなんにせよ早く治る分には問題はないの。スズリや、一応背中に傷や痣などがないか見ておくれ」


 後ろ髪を持ち上げ背中をスズリの方に向けてしばらく、一通り見終わったのかワシの前に回ってきたスズリがキュキュと頭を横に振る。


「んむ、背中にも傷はないか。よしよし、スズリは賢いのぉ」


 スズリを抱き寄せて頭や喉を撫でると、コンコンと気持ちよさそうに鳴いている様に頬が緩む。


「おーい、起きてるなら飯食って出るぞー」


 スズリと戯れてるいと若干眠たそうなアレックスの声が外から聞こえてくる。


「起きとるぞ、今ゆくからしばし待つのじゃ」


「それじゃ、先食ってるわ」


「むぅ」とため息一つ、服を脱いだついでとばかりに全身を拭き、手早く新しい服に着替える。

 法術で多少手間は省けるとはいえ、洗濯機はこの世界に今のところ存在しない。

 市井の女性ですらブラシなどで汚れなどを落としたりする程度で、数日は同じ服を着るということも珍しくはない。

 服はそれなりに高価なので、毎日洗い替えできる程の数を持っていない人が大半だし。

 ましてやダンジョンなどで着替えるとなど、かなりのお金持ちか変わった人くらいのものらしく、ワシも最初ずいぶん変な目で見られた。

 そんなどうでもいいことを思い返してる内に着替え終わったので、さっさとテントを出て朝食を済ませることにする。


「やっと出てきたか、怪我の具合はどうだ?一番手酷くやられてただろ?」


 そう訊いてくるアレックスもすでに血は止まっているが、見えるだけでもかなりの数の傷や火傷の痕が見える。


「んむ、ワシは大丈夫じゃ。人から見ればアレックスの方が重症に思えるじゃろうよ」


「ん?確かによく見りゃ…ぶつけた痕どころか、かすり傷一つ負ってないように見えるな?まさかもう治ったとか?そんなバカな」


「最近は怪我なぞしとらんかったから分からんが、傷の治りがはようなっとる気がするの」


「早くなってるってレベルじゃないと思うんだがなぁ…」


 呆れた顔をしてるアレックスを尻目に、パンや干し肉などを胃に収める。

 インディやカルンはまだまだゆっくり食べているようなので、適当にアレックスと話を進める。


「さて、昨日拾った金剛杵なんじゃがあれはどうするかの?」


「金剛杵?あぁ、動力装置か。そうだな、とりあえずはカカルニアに戻ってからだな。砂漠のギルドじゃあれだけの大物は扱えないだろうからな」


「ふむ、そうか…ところで、今回は一つ限りじゃったが、他にも複数の遺物なぞが出てきたらどうするのじゃ?」


「それらは基本全部ギルドに提出だ。今回みたいに有名なもんでもない限り、見ただけじゃ使い方もわからんものも多い。そんなもん危なくて使う気にもなれん。だから、一度全部ギルドに渡して調べてもらうんだ。中にはギルドが絶対に回収するってもんもあるが、基本的にはギルドにそのまま売るか受け取るかを選べる。全部もらう場合は手数料を払う必要があるけどな。とりあえず遺物に関してはそんなもんだ」


「なるほどのぉ。してギルドが絶対に回収するもんとはどんなものなのじゃ?」


「さぁ?それに関しちゃどういう効果の遺物なのかすら教えてくれないからな」


 多分ではあるが、戦争などに使われそうな危険なものを回収してたりするのだろうと適当にあたりを付け、なるほどと頷いておく。

 そうこうしている内にほかの二人も食べ終わってテントをしまい始めていたので、ワシも自分のテントを片付ける。


「よし、それでは帰るかの」


 転送装置を使い何日かぶりに入口へと戻ってくると、生きていたのかと衛兵が笑顔で手を挙げてくる。


「ふっふっふ、そうそう簡単にくたばりはせんよ。それどころかしっかり踏破してやったわ!」


 魔晶石の欠片を手に胸を張って答えると、衛兵やその場にいた他のハンターからもおぉ、と感嘆の声が上がる。

 衛兵やハンター達の賞賛の声を背に久方ぶりに日射しの下に戻る。すでに日は中天にまで昇っており、思わず眩しさに目をしかめる。


「久方ぶりの日の光はいいもんじゃのぉ、まぶしくなければ最高じゃ」


「いや、それよりさっさと帰ろうクソ熱い」


 気怠げな何の感慨もなさそうなアレックスの言葉に、ワシ以外は同意なのか速足で入口の火の池の道を歩いていく。

 管理小屋まで戻ると入口で、ダンジョン内で全滅したパーティのギルドカードや遺品は一度こちらで確認作業をするので預かりますと言われた。

 確認作業が終わったら砂漠の町のギルドへと持って行ってくださいとの事で、さらに確認作業にしばらく時間がかかるらしいので今日はここで一泊することになった。

 すぐさま宿泊する事となったが、何方にせよ今から砂漠の町に戻ったところで着くのは夜遅くになってしまうので問題はない。

 管理小屋の広場に入れば、そこにはざっと見ただけでも二十以上のテントが張られていて、今も設営作業をしている人がいた。

 そんな中適当にテントを張り、特にすることもないので各々時間をつぶすことになった。

 ワシは最近あまりかまってやれなかったので、思う存分スズリと遊び時間をつぶすことにした。









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― 新着の感想 ―
[一言] スズリの餌は日本的? 乗合馬車用の暇つぶしが必要。 1本を買う。 2記憶からゲームを作る。exリバーシ
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