532手間
翌朝、騎士たちによる拷問を受けた男たちは一体何をされたのか判別がつかない程にボロボロの姿となり、まるで道端の小石の様に転がされていた。
薄く胸が上下しているので四人ともまだ生きているのだろうが、指などは出来の悪い造花の様に曲がり生きていたところで盗賊、ましてや普通の生活など二度と不可能だろう状態だ。
「こ……これは?」
「おはようございます、クリストファー様、セルカ様」
昨晩なにがあったのか知らないクリスは一歩足を引いてるが、足元に転がる惨状など幻覚だとばかりに騎士たちは何事も無いように挨拶してくる。
「うむ、おはようなのじゃ。して、なんぞ情報は引き出せたかの?」
「はい、セルカ様。意外としぶとかったのですが欲しい情報は全て。クリストファー様、つきましては近くの者にこの情報を伝えたいので先行して二名ほど送りたいのですが許可を頂けますか?」
「あ、あぁ。許可する」
「ありがとうございます」
アジトか残党の場所でも聞きだしたのだろう、流石にワシらが討伐に出向くことは出来ないが逃げられる訳にもいけないので近くの町などに居る騎士たちに情報を伝える為に、護衛の騎士の中から二名ほど先行させたいと騎士の一人がクリスに具申する。
一応ワシらの集団のトップはクリスなので、護衛が離脱するにはクリスの許可が居る、しかしクリスはこの惨状に軽く混乱しているのか、あっさりと許可を出してしまった。
元々護衛の騎士は十名で数としては少なかったところに更に二名減る、使用人や侍女も最低限自衛できるとはいえ騎士には遠く及ばない。
普通に考えれば到底許可できる状況ではないが……ワシが居るのであれば護衛が全員抜けたところで問題無いので、クリスも大丈夫と考えているのだろう。
「あー、それでこれはどういう事なんだ?」
「はい、昨晩賊が襲ってきまして、彼らはそれの生き残りでございます」
「それは……まぁ見ればわかるが、一体いつの間に」
「クリストファー様のお休みを邪魔するほどの相手でも無いと思いまして」
「そうか……」
ワシが居なければ弓や狼の奇襲で怪我というか下手をしたら命を落としてたかもしれないと思うのだが、それを言って護衛対象を不安にさせることも無いかとワシもあえて突っ込まず、クリスの横で傍観する。
「ところでセルカは、これの事を知ってるような口ぶりだったけど」
「ちと夜中に目が覚めてのぉ、その時ちょうどこやつらが襲ってきおっての、まったく運のない奴らじゃ」
「えぇ、セルカ様のお陰でこちらも有利に事を運べました」
ふふんとワシが胸を張れば騎士もおだててくる、それに気を良くしふふふんと更に胸を張れば、はぁっと深くため息をつきポンとクリスがワシの肩に手を置く。
「危ない真似はしないって前に約束したよね」
「危ない真似などしてないのじゃ、ちょこっと手伝っただけなのじゃ!」
「ちょっと中で話をしようか」
ジトッとした目でワシの両肩に手を置いてクリスが問いかけてくるので慌てて言い訳を言うが信じてないのか、更に視線がじとっとしたものに変わる。
「クリストファー様、こやつらはいかがしましょうか?」
「お前たちに任せる」
「かしこまりました」
ワシの手を引いて天幕にクリスが引きずり込もうとするので騎士たちに視線で助けを求めれば、彼らはしっかりと頭を下げ見送るばかりで役に立たない。
結局その後、アニスが朝食を持ってくるまでみっちりと、クリスに危ないことに首を突っ込むなと説教を食らうのだった……。




