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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
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48手間

 小部屋で休憩…というよりもキャンプを行い一晩を過ごす。一晩と言っても、寝て起きたからそう言っているだけで実際のところはわからない。

 洞窟探索時に、アレックスが時間をある程度でも把握できていたのは、定時連絡の為に気を付けていて、その集中を中断する要素が最後以外なかったからできた芸当だと言っていた。


「それじゃ、今後は魔法の威力や数は最低限にして持久重視でな。炎の渦は体の大きさに比例してちっちゃいから、注意してれば十分対処できる。もちろん、やばい数が来たら初手から全力で頼むぞ」


 そういってアレックスが今後の動きをカルンとインディに伝える。

 起き抜けというのはやはり頭が回らないという事で、流石にそんな状態のまま死ぬかもしれない所に行くわけにもいかないと、火を使わない食事をしつつ少し時間をつぶす。

 その時、暇なのか頭を覚醒させるためなのか、魔法が使えないワシの為にカルンが魔法について軽く教えてくれた。


 カルンの話を纏めると、魔法というのはその構成の大部分が空気中を漂っているマナを利用したモノ。もちろん自分の体内のマナも使用するが、それは基本的に種火や雷管のような役割を担っている。

 この種火や雷管の部分が誰にでも使える法術にあたる。魔法使いになれるかどうか、そして強くなれるか否かは、外部のマナを如何に上手く使えるかに係っているらしい。サンドラの話と被っていた部分はだいぶ聞き流してしまったが…。

 この説明だけ聞くと少量のマナの消費で強力な攻撃がし放題に聞こえるが、そうは問屋が卸さないとはこの事だろうか。外部のマナを操るのはなかなかに曲者らしい。

 魔法を行使するには相当な精神集中を強いられるとのことで、魔法をギルドなどで教わる際には、無理に連続使用しようとすれば精神崩壊すると必ず釘を刺される程だという。

 さすがにその話を聞いて心配になったが、件の人物は三日三晩も寝食を忘れ魔法を使い続けた挙句の果てという事だったので、一先ず胸をなでおろした。

 カルンの話を聞き終え、確かに精神集中が必要なら起き抜けで動かぬのは道理じゃなと納得する。


「さてと、話も一段落ついたみたいだしさっさと出発するか」


 アレックスが出発を促し、その言葉に合わせてジョーンズがまず扉に耳を付け、その後少しだけ扉を開いて安全を確認する。

 さすがに扉を開けた途端に蛾の大群とご対面なぞ、いろんな意味で勘弁してもらいたい。

 このダンジョンの複雑な通路、どこも同じ構造で下手をすれば堂々巡りになりそうだと思ったが、ジョーンズ曰く今のところそれは無いと。

 理由を問えば、通称『パンくず』と呼ばれる法術に近い技を使って二、三日は残留し使用した本人にしかわからないような目印をつけているからだそうだ。

 その通称から、この世界にもヘンゼルとグレーテルのような御伽話があるのだろうかと、別のことを考えてしまう。

 しばらく歩き回ったが四階層にあった豪華な扉は見当たらず、その代わりに十階層へ続く階段を発見した。


「ボス無しということかのぉ」


「楽なのはいいことじゃねぇか」


 ジョーンズとともに階段をのぞき込みつつ呟く。

 特に何も無さそうだったので階段を登ると転送装置が目に入る。


「実は登った先がボス部屋などということも無かったの。さてと、それでは一度戻るかの?」


「いや、ここで一度キャンプをして再度登ろう。今のところ敵の強さは対処可能なレベルだし、小部屋で十分安全に休憩が取れることも分かったからな」


「ふむ、確かに行って戻ってはそれなりに面倒じゃから、その意見には賛成じゃが…ここは安全なのかえ?」


「それは大丈夫だ。何故か魔物は転送装置に寄り付かないって話だからな。同業者に襲われるって事もまず無い。そういうことがご法度だってのもあるが、万が一やったらカードにしっかり記録が残っちまうからな」


「ふむ、それならばよかろう」


 ワシがリーダーということをすっかり忘れていたが、その一言で皆がテントの設営を始めた。

 さすがにこんなところで焚火も出来ないので、食事は火を使わないものだけになってしまったが。


「ところで、管理小屋から来る際に印はつけはしたがの、期日は伝えとらんかったが数日戻らんでも大丈夫なのかの?」


「それは問題ない。ダンジョン行く奴の中には平気で数か月単位でこもるやつもいるくらいだ。構造が変わるのも、短くとも一期はそのままらしいしな」


 なるほど、短期間少人数であれば収納の腕輪による備蓄、そして法術による水等の確保が出来る故の選択か…。


「そう言えば、ほかにもハンターは来とるはずなんじゃが誰にも会わぬのぉ」


「ん~、それは多分構造が変わってまだ数日しかたってないからだと思うぞ」


「ほう?それはまたどういう意味じゃ?」


「砂漠のギルドで聞いた話なんだが、前回は一巡り半ほど長く構造が変わらなかったらしくてな?最後の二期ほどは殆ど人が居なかったらしいぞ。俺が前来たときは管理小屋のキャンプにこれでもかとテントが並んでたぐらいだからな」


「なるほどのぉ、期間が長ければそれだけお宝も取りつくされて、命を賭けるのは割りに合わぬというわけかの」


「そんなとこだ。あと数日もすれば、構造が変わったという話が広がるだろうし、人も増えるだろ。そう考えると俺たちは運がいいな。これまでの小部屋には何も無かったが、そもそもいい物が出るのは後半からってのがもっぱらの噂だしな」


「それもそうじゃの、では後続に追いつかれぬようさっさと寝て出発してしまおうかの」


「それもそうだな」


 アレックスと話すのをやめて自分のテントへと潜り込む。

 さすがにテントがひしめき合っているのは想像できないが、砂の上で人がひしめき合っているのは、なんぞ海水浴場を思い出すのぉと今の自分が水着を着て浜辺に立っているのを想像しながら眠りにつくのだった。

この世界には水辺はあるが安全ではないか。

安全だけど宗教的な理由で遊泳禁止。

悲しい。

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