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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
5/3368

5手間

 女神さまに示された方へ、森の中を歩いていく。

 鬱蒼とした森の中、獣人の体の影響なのか、方角を見失う事無く、楽々と歩いて行ける。

 女神さまからワシに頼まれたことは一つ、ワシがここへ来ることとなった原因である召喚の儀式の核となるモノを破壊すること、これは女神さま曰く見れば一目でわかるらしい。

 それ以外は特にして欲しいという事はなかったのだが、銃や爆弾などの兵器やそれに届きうるモノがあれば破壊若しくは失伝させて欲しいという。

 直接それら兵器が世界に影響することは無いのだが、もしそれらを使い、地球でかつてあったような世界大戦とまでは行かずとも大規模な戦が起き、人が大量に死んでしまった場合、恨みつらみで穢れたマナが処理できる量を越えてしまい、世界中で魔物が溢れてしまうという。

 ただ、これに関してはこの世界の文明レベルが低いので、早々あるものでは無いとはこれまた女神さまの弁。

 そんなことを考えつつ一刻ほど森の中、襲ってくる魔獣を倒しつつ歩く。


 この世界、一日は十二刻に区切られており、一刻、半刻、四半刻。

 その三つしか時間の区分がなく、時計も無いらしい。一体どうやって時間を知っているんだろうか。

 とりあえず前世に合わせるならば順に、二時間、一時間、三十分といった感覚だろうか。

 けれどこの世界、一日の長さは二十四時間じゃなく、もう三、四時間くらい長いらしい。

 なのでまぁ、参考程度ね。とは女神さま談。


 時刻と来れば次は日付。一年は一から四の期に分けられている。

 一期は初、中、末の三つの月に分かれ、ひと月は二十の日に分かれる。

 今は二期末の月三日。何年、という数え方は廃れてるというか、存在しない。

 何年前、何年後というのは、何巡り前、何巡り後と言うらしい。

 この世界はずいぶんと、時間に大らかというか関心が薄いというか…。


 それは置いておいて、気候なのだが世界中を巡るマナの恩恵で一年中…いや一巡り中、安定して温暖。

 特定の地域だけ、マナの異常な程の作用により気候が変動している。

 突然、砂漠になってたり、雪原地帯になってたり。

 この特定の地域というのがダンジョン、そうあの敵が出てお宝があるダンジョン。

 そしてこのダンジョンにこそ、女神さまにお願いされたものがあるらしい。

 それを探し出すのがワシの生涯の目的だが、どこにあるかまでは女神様でもさすがに判らなかったらしい。


 そんな事を思い出しつつ、半刻ほど歩いてやっと街道に出る。

 それまで何度か魔獣には遭ったけど、湖畔であった以外に魔物には遭わなかった。

 森の中だからなのか、狼やでかい兎、猪、鳥と魔獣のバリエーションは富んでいた。

 魔獣はその死した身を穢れたマナに侵された動物、つまるところゾンビ。

 魔物と違い、血もあるし肉もあるせいなのか、魔物に比べ柔らかい。

 なので普通のナイフでも、特に苦労することなく簡単に倒すことが出来た。


 魔手で叩けばまさに鎧袖一触、爪でえぐれたところだけ綺麗に無くなった。

 初遭遇したのが魔物で、魔物は血も肉も無く穢れたマナの塊。

 そのせいで魔獣には血があるという当たり前のことを失念し、思いっきり真っ黒な返り血を浴びてしまった。

 しかし、そのお陰といっていいのだろうか、ポンチョを出し入れしたら体の汚れも消えることに気が付いた。

 これは汚れたとき楽だと、きゃっきゃと喜んでたら、魔獣の体がぐずぐずに崩れていった。


 実にグロテスクな様に、うげぇっと嘆きつつ眺めていると、ぐずぐずのどろどろの中にちらっと光るものが見える。

 魔物の魔石とは雲泥の差ほどの小ささの魔石の欠片…。

 うげぇっとなりながらも眺めてたのは、これを見つける為。


 魔物の魔石ほどの大きさならば、魔具などと呼ばれるものの燃料になる。

 けれども魔獣のものはクズ石過ぎて用途がない。

 厄介なことに放っておけば、他の魔獣が穢れたマナを取り込みに近づいて来たり、

 再生したりアンデットになってしまうから、砕いてマナに還元する必要がある。


 魔獣のクズ石は魔石と違って、脆く砕け易いから砕くのも特に手間にはならない。

 大体は戦闘中にすでに砕けてたりするらしいけど、万が一の為、必ず確認するのがハンターのマナー。

 クズ石を核にしていた魔獣の体は、砕けて少ししたら草木や地面に即座に吸収されるから、すぐわかる。

 実に中途半端にゲームっぽいというか…確認が楽なのはいいことだけど。


 女神さまに示されたのは森を出るまでの方向、それ以降は教えてもらっていない。

「さてと、どちらに向かうかのぉ」とひとりごちていると。

 どこからか金属がぶつかる音が聞こえ、それにあわせて自分の耳がピクピクと動いてる気がする。

 意識して耳をせわしなく動かして、音のする方角を特定する。

 とりあえず音のもとへ走り出し、しばらく走っていると荷を満載した馬車が見えた。

 おそらくはそれの護衛であろう、バックラーと片手剣を持った軽装の戦士が傍にいる。

 御者っぽい人は見当たらないが…隠れているのか死んだか。

 そして戦士を取り囲む、明らかにボロボロの身なりをした、これぞ盗賊って感じの三人組。


「まぁなんというかあれじゃのぉ、お約束じゃな」と一人つぶやくのだった。

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