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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
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45手間

 転送装置の認証を済ませたワシらはダンジョンの奥へと進む。衛兵の話によればつい数日前にダンジョンは内部構造を変えたようだった。

 不定期に内部の構造が変わるダンジョン。その為、地図などによる堅実な攻略などが望むべくもないが、その代わりなのか何故か遺物などが随所に出てくるらしい。


「ふむ、この白い石材どこぞで見たやと思えば、あの洞窟にあった施設と同じものじゃな」


「てことは、こことあそこは同時期の建築物って事か?」


 アレックスが聞いてくるが、年代測定の知識も設備もないため正直何とも言えない。確かに石材であれば数百年もつものもあるだろう。しかしそれでも普通は風化は免れない。

 なのにここの石材は、まるでつい先ほど施工が終わったかのように綺麗なのだ。そもそも、不定期に建物と内包物が自動的に更新されるという時点で謎技術すぎる。


「さてのぅ、石材だけでは後も先も分からぬ。そもそも、あの施設にあった機械群は今の世に詳しい文献すら残っておらんものじゃ。研究施設の最新鋭設備だったからと言われればそれまでじゃが、それでも類するものの文献すら無いのじゃ。千も万も前のものと言われても納得出来る。もしかすればバスティオン山脈ができる前のものかも知れんしの。それほど昔なら百や千の違いなど些事よの。存外、超技術の古代文明でもあったのかもしれんのぉ」


「えーっとつまり?」


 どうやらアレックスはこの手の話が苦手なようで首を傾げている。よく見ればカルンとインディも似たような状態だ。


「簡単に言えば、はるか昔に滅びたすさまじい技術を持った古代文明の遺跡群ではないかのぉということじゃ」


「そんなすごい技術を持ってたなら、なんで滅びたんだ?」


「大方、戦争でもして自滅したのではないかの。それかバスティオン山脈の逸話のように怒りに触れて滅んだか…それこそワシらの与り知らぬところじゃ」


「戦争したところで、そんな滅ぶほど人が死ぬかぁ?精々敵対してるとこの人たちだけだろ」


「リソースが何か不明じゃが、不定期に建物を自動的に更新したり、長い年月風化しない石材を作り出す。これほどの技術を持っておるのじゃ、一度に万の人を薙ぎ払うものを作り出したとて不思議ではなかろう?」


「はぁ、そんなおっそろしいもんよく作り出すよなぁ…というか俺にとっちゃそういう事を思いつくセルカのほうがすごいわ」


「効率の良い殺し方なぞ、思いついたところで褒められたものではないの」


 本音を言えば、前世でそういうものを知っているってだけじゃしのと心の中で付け足す。


「そんなもんかねぇ…っとお客さんだ。折角だしカルン!お前の実力をセルカに見せてやれ」


「はい!」


 話しながら歩いていると通路の奥から、蛆虫を小型犬ほどの大きさにして、クリーム色のその体に少し赤い染料を混ぜたかのような気持ち悪い魔物が五匹ほど這いずり出てきた。

 そんなあまり直視したくない魔物を前に、カルンは杖をぎゅっと握りしめてワシの横に出てきて、何故か嬉しそうな顔で杖を掲げ魔法を唱える。


『アイスボルト!!』


 その声と共に相手の数と同じ五本の氷柱が蛆虫の魔物に突き刺さり、何かを引っ掻いたかのような見た目に違わぬ不快な断末魔と共に塵と消える。


「おぉ、一撃とはすごいのぉ。正直あれには近づきとう無いしこれは助かるのじゃ」


「えへへ」と照れたようにカルンが頭を掻いているが、アレックスら三人は違うそうじゃないとばかりに複雑な表情だった。


「ふむ、丁字路かの。これはどちらへ行くかのぉ」


「こういう時は右だ右!」


 そういって斥候のジョーンズがずんずんと先へ行ってしまい、「あいつの勘はそれなりに当たる」とアレックスもそのあとに続く。


「おぉ、置いていくでないわ」


 慌てて背中を追いかける、ゲームであれば落とし穴などのトラップに気を付けなければならないが、この世界のダンジョンにその様なものは無いようだ。

 ダンジョンはおそらく何らかの施設が暴走状態にあるだけで、元よりトラップなどは存在しないのだろう。魔物は何らかの要因で洞窟の様に生まれているのか…洞窟で手に入れた日記に書いてあった話から、人工的に魔物を生み出す術を手に入れて、それを警備兵代わりにしていたのか、そんなところだろう。

 十字路や三叉路等々、分岐点を大して思案もせずジョーンズは進んでゆく。


「地図も無いから思案する必要も無いのじゃろうが、帰り道は大丈夫なのかのぉ」


 そう呟けば、インディがそっとワシの肩に手を置き大丈夫だとばかりに頷く。


「おぉそうじゃった、インディは地図作りが得意なんじゃったの」


「それに五階層まで行けりゃ入口まですぐ戻れるんだ。帰り道なんざ気にする必要はないさ」


 言いながらジョーンズはずんずんと先へ進んでいく。何度も道を曲がり、時には直進し突き当りを引き返しつつもダンジョンを進む。

 一階層の敵は大蛆虫だけなのかそれなりの数出てくるが、即座にカルンが氷柱で串刺しにしているため、戦闘と言えるようなものは未だなかった。


「ようやく階段かの…これであの蛆虫とおさらば出来ればよいのじゃが」


「確かにアレは気持ち悪いよな。女の子には辛いか…というか、セルカは女の子だったな…」


「は?アレックス…お主は何を言っておるんじゃ?」


「あーあー、いや博識だし言葉遣いとかなぁ…戦いでも勇ましく突っ込んでくし…あーいや、すまん」


 目を逸らしながらしどろもどろになり、後半はまるで呟くように謝ってきた。


「まったく失礼な奴は置いておいて先に行くかの」


 そういってジョーンズよりも先に階段を登ってゆく。


「あっ!待てって置いていくなよ!ていうか、そうやって危ないかもしれないところに何の躊躇もなく突き進むとことかがな!」


 アレックスが背後で何か叫んでいるが、よく聞こえないので無視してさらに階段を登る速度を速めるのだった。



ランダム自動生成ダンジョンなのに何度も攻略してるうちになんとなく道がわかるのはなんでなんでしょうね?

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