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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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442手間

 放課後、先生に聞いてワシが参加できそうな部活を幾つか聞き出して熟考する。

 実際に行ってみれば早いのだろうが、まずはある程度絞り込んでからの方がいいだろう。

 何せ中々に数がある…。


「ふーむ。まずはこれとこれとこれは除外じゃな…」


 犢皮紙(とくひし)に取ったメモに書いてある部活名と場所のうち、今しがた除外したものをナイフで紙の表面を削り消していく。

 大前提として一階にある部活だけ、エレベーターなんて無いので当たり前ではあるが誰かに上に運んでもらう必要がある。

 侍女に運んでもらえば良いしそれを許される立場だが、毎回毎回それもどうかと思うので内容も考えることなく除外していく。


「となると結構少なくなるのぉ…」


 学院の一階は通常の授業の為の教室が大半であり、必然的に他の用途の部屋は三階建ての建物の内の二階以上へと集中してしまう。


「茶道部、これは茶道というよりお茶会といったほうが良さそうじゃな…候補としてはありかの。次は刺繍部、うーむ…家で出来るし却下。調理部、お菓子特化のようじゃが…異物混入になりそうじゃから却下。もちろん毎日手入れしとるから大丈夫じゃがの! お次は…」


 候補に丸を付け、除外したものは消していく作業を続ける。

 部活の定番の一つであろう楽器演奏を習う部活もあったがワシの耳には五月蠅いので却下、音楽鑑賞する部もあったが同様の理由で却下。

 別に何れかに入らなければならないという義務も無いので、入らなくても問題ないのだが屋敷に戻ってもどうせ部屋でゆっくりとするだけなので、要は暇つぶしという奴だ。

 というかこの学院の部活自体、貴族として己を磨くというのは名目で放課後の無聊を慰めるのが本来の目的らしいのだが。

 しかし、先生によれば爵位が下位の者は前者の名目で入っているとの話だった。


「確かに手習いをする余裕が無い者であれば、よい機会じゃろうしのぉ」


 随分と空白が目立つようになってきた犢皮紙を見ながら、ペンを置いて伸びをする。


「さてとアニスや、今日はもう帰るのじゃ」


「見に行かずともよろしいのですか?」


「うむ、まだ数があるからのぉ…もうちと絞ってから行くのじゃ」


 最近は熱心に乗馬の技術を磨いているクリスを残し、先に屋敷に帰ることが多い。

 屋敷に帰ってから更に候補を絞り、翌日の放課後に実際に部活の教室に赴いた結果…全滅だ。


「うぅーむ。よもやこのような結果になろうとはのぉ……」


「無理にどこかに所属せずともよろしいのではないですか? 本日見に行きましたところは全てお屋敷でも出来る様なことに思えましたが」


 アニスの言う通り、お茶会部はお茶のブレンドだったりブランドだったりを学ぶのではなく本当にお茶するだけ、それ別に部活にする必要ないよねと危うく口にしかけるほどだった。

 他に候補にあった絵画部と彫刻部もただ鑑賞するだけ、実際に絵を描いたり彫刻を創り上げたりということは無かった、ちょっと興味あっただけに残念である。

 それ以外にもいくつか候補はあったのだが、どれも似たような感じでガッカリしたものだ。


「クリスが頑張っておるというのに、ワシだけ何もせずというのもどうかと思ってのぉ……」


「殿方が頑張るのは当然ではございませんか? 奥方はそれを見て優雅に微笑むのが嗜みかと…」


「そこはワシの気質じゃからのぉ…じっとしておるのは性に合わぬ」


「はぁ」と気のない返事をするアニスを尻目にさてどうしようかと頭を抱える。

 しかし、そんなワシを気遣ってという訳では無いだろうが、丁度よく現れた先生が一つ示してくれた部活に「それじゃ!」と早速飛びつき、アニスに車いすを押され最高学部へと向かうのだった…。

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