表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
45/3463

43手間

 砂丘を登り切れば、少し目線を下げたところにアレックスの言っていたとおり、管理小屋が見えた。

 小屋以外にも、ここならばダンジョンの入り口でも見えないかと思ったのだが、残念ながら管理小屋の先にある砂丘にまたしても遮られて、ここからは窺い知れない。


「ふむ、小屋と言うもんじゃから、なんぞ小さいもんかと思うとったが…ずいぶんと立派な」


 砂漠の町と同じ、土と砂で造ったかのような色合いで四角形なたまご豆腐の様な建物なのだが、小屋というより施設と言ったほうがよさそうな大きさだった。

 十数人が一緒に暮らしていても十分なスペースがありそうなほどの建物が一軒、そしてその前には百人いても遊びまわれそうな広場。

 広場にはちらほらとテントが張ってあり、まるでキャンプ場のようにも見える。

 そのキャンプ場と建物の周りにはぐるりと高い塀が張り巡らされ、唯一開いている門の外側にはこちらこそ小屋の名にふさわしい建物が一軒あった。


「昔はもっと小さかったらしいからな。そんときの呼び方の名残りって話だ」


 管理小屋を眺めていたら、いつの間にか隣に立っていたアレックスが教えてくれた。ちなみにカルンの手はとっくに放している。


「そうそう、あの入口の脇に建ってるところでパーティの人数とリーダーを記入するんだが、今回のリーダーはセルカ、お前な」


「んなっ!なぜワシなのじゃ?一番年下じゃろう?」


「年齢としちゃそうだが、等級は一番上だろ?リーダーつったって名前書くだけで特に面倒な事はないしな」


「うぅむ、そういうことなら仕方のない事なのかのぉ」


 そういいつつも砂丘を下り、管理小屋入口へと向かう。

 先程聞いた通り、入り口手前の小屋で名前と人数を記入し、管理費を払い中へ足を踏み入れる。


「んお?ここは砂ではないのかの」


 地面が今までの砂独特の柔らかい足を取られるような感じではなく、しっかりと土を踏みしめるかのような感触に変わる。


「ここを建築する際に、魔具や魔法で地盤を固めたんですよ。砂の上に建てては沈んでしまいますからね」


 入口の小屋にいた衛兵の一人がそう答えてくれる。

 確かに、これだけの規模のものを砂の上に直接建てていたらすぐに崩れてしまうだろう。


 キャンプ場の中では外からも見えたテントなどの他に日陰で休んでいる人や、話し合いをしている人たちが居た。

 新しく来たワシらをちらちらと窺いはするが、すぐに興味を無くしたのか話にもどったりする。

 単純に誰が来たかなという程度の視線だったので気にすることもなく、適当に空いている場所にテントを張ることにした。

 すでに若干暗くなり始めていたので急いで張り、最後に三つのテントで囲むような位置に焚火を作る。

 その焚火で夕食を作って食べながら、ダンジョンの事について、既に何度か行ったことのあるアレックス達が話し始める。


「火のダンジョンってのはその名の通りめちゃくちゃ熱い。だから水は兎に角頻繁に補給しろ。かなり水は出し難いが、それでも面倒くさがらずに飲め。でなきゃ死ぬからな」


「カルンは一度ぶっ倒れたし言われなくてもわかるよな?」


 アレックス、そしてジョーンズと、ダンジョンというより熱中症の対策を重ねて忠告してくる。


「あとはダンジョンの中はよく分からない石材で出来た人工物のような感じなんだが、ところどころ崩れて火の川が流れているから気をつけろよ」


 火のダンジョンの中を流れる川と来ればこれはもう、溶岩の川しか無いだろう。


「ふむ、そのようなものに近づいても大丈夫なのかえ?」


 冷えかけた溶岩ならば兎も角、話しぶりからしてどろどろに赤熱した真っ赤な溶岩だろう…前世であれば防護服なしでは近づくだけでも丸焼きは免れない。


「あぁ、近づく位は問題ないぜ、もちろん落ちたら骨も残らないけどな。とりあえず問題はない、無いんだが…焼き肉の気分は味わえるな」


 アレックスに代わりジョーンズが茶化しながらそう答える。


「ふむ、まぁそういう場所があれば迂回したほうが良さそうじゃの。ところで、長い間ここにあるダンジョンのようじゃし、地図の一枚や二枚あるんではないのかの?」


 あれば攻略が楽になるだろうと試しに訊いてみる。


「あれば良かったんだけどな、転送装置が置いてある付近以外は不定期に地形が変わってしまって地図が役に立たないんだよ」


「ま、その代わりと言っちゃ何だが、地形が変わった直後は遺物が出てきたりするし悪いことばかりじゃないけどなー」


 解りやすく言えば、不定期にリセットされる自動生成ダンジョンと言ったところか。


「なるほど、それまた不思議なもんじゃのぉ…」


「遺構ですら何一つ仕組みがわかってないのに、ダンジョンなんて遺構の集合体のようなものだからな。遺物が手に入らないようであれば、誰もこんな所に手を出そうなどと考えはしないだろうな」


 アレックスの言う通り、遺物というお宝が出なければ、この様な危険な物件なぞ好き好んで探検するようなバカはいないだろう…。


「そうだな、とりあえず明日は五階層の最初の転送装置を目指す。そうすれば次からは五階層から始められるからな。五階層の手前の部屋に強い敵がいたりする時があるが、それはまぁ運次第だ。とは言え、その辺りの魔物なら問題は無い筈だ。その先は様子を見ながらだな。やばそうなら引き上げて攻略は終了だ。とりあえず日も沈んだし今日は休もう」


 アレックスが話を纏めると、各々割り当てられたテントへ入る。道中も同じだったが男は二人で一つのテントを使いワシだけ一人で一つのテントだ。

 全員がテントに潜り込んだのは、普段の野営とは違いここの衛兵が代わりに不寝番をしてくれているからだ。久々にしっかり寝られると衛兵に感謝しつつ、すぐに寝息を立て始めた。


世界観や用語など判り難い、これはどういう設定なの?等ありましたら感想などで教えていただけると助かります。


後日、後書き等に解説など書かせていただきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ