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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
44/3462

42手間

 砂漠の町の外周に張り巡らされている土の壁が大きくなってきた。


「セルカ、そろそろ町に着くから御者交代するぜ」


「んむ、わかったのじゃ」


 そういって手綱をアレックスに渡し、馬車の中へと入る。

 この町の入門税は二銀だった。このような所だといろいろと管理が大変なのだろうか。

 門を潜り町中に入ったので、よく眺めようと御者台に戻る。

 しかし、目に入るどの建物も平屋で二階建てのものがない上に、なんの飾り気もない。

 なるほど、これはアレックスが見るところがないというのも頷ける。

 けれど、これはこれでアラビアンナイトの世界に迷い込んだようで素敵ではある。


「これで魔法のランプでもあれば面白いんじゃがの…」


「さぁ…遺物のランプくらいならあるんじゃないか?」


 ぼそっと呟いたつもりだったが意外と聞こえていたようで、アレックスがズレた答えを返してきた。


「ま、ダンジョンのお膝元じゃしの」


「そうだな。とりあえず今日は宿とってからギルドいって、実際にダンジョンに行くのは明日以降だな」


 その言葉通り、宿をとりそこで馬車を預けてからギルドへ向う。

 ギルドでならば、地元の人ならではの場所を知っているのではないかと思ったのだが、それは残念な結果に終わった。

 この町はギルド職員やハンター、住人向けの商人、そして日用品などの修理も受け持つ鍛冶師。

 あとはその家族が住んでいる程度で、酒場などはあるものの、観光するような所はないといわれてしまった。

 それもそうか、この様な危険地帯に、態々観光に来るような人なぞおらんか…。

 その後、食料などをしっかりと買い込み、明日は日が昇る前に出発するとの事なので、早めに宿で就寝する。


 翌朝、宿の食堂はまだ開いてない為、宿の部屋で昨日買った軽食を食べつつ、今後の予定をアレックスが話す。


「この時間から出れば、夕方までにはダンジョンに着くだろう。着いたら管理小屋の傍でキャンプしてダンジョンに入るのは次の日だ」


「のう、管理小屋とは何を管理しておるんじゃ?」


「ん?あぁ、ダンジョン内のある程度階層まで到達したやつにだけ利用が許可される転送の遺構と、その登録の管理だ」


 ゲームで言うセーブポイント的な設備と、しばらくご無沙汰で忘れかけていたが、安否を判別する魔具の管理をしている人が常駐してるそうだ。


「よし、ほかになければ出発するか。またなんかあれば道中な」


 そう言ってアレックスを先頭に宿を出る。町からダンジョンまでは砂漠のため馬車は使えない。

 なのでここからは徒歩だ。夜でも暑いとはいえ、やはり日が出ると夜間の比ではない。そのためこんな夜も明けきらない時間帯に出るのだ。

 砂漠に足を踏み出し、今さらながらこの砂漠で遭難しないかが心配になってきた。


「アレックスや、ダンジョンまでの道は知っとるのかえ?」


「大丈夫だ、今は暗くて見えないが岩山があってな、そこにダンジョンがある」


 そう言われて遠くを見てみれば、砂丘の向こうにうっすらと山の様なシルエットが見える。

 ヒューマンでは確かに暗ければ見えないであろう程度だが、確かにあれならば迷うことは無いだろう。


「ふむ、では帰りはどうなのじゃ?」


「それはもっと簡単だ、世界樹の見えるほうを目指せばいい」


 確かに言われてみれば世界樹は文字通り世界中どこからでも見える。これ以上の目印はない。

 しかも、砂漠の町は山と世界樹を結んだ直線上にあるようだ。これなら迷いようがない。


「そうか…砂漠での遭難なぞ考えたくもなかったが、これなら大丈夫そうじゃの」


「普通は木も無い見通しもいい場所だから、初めて来る奴で遭難の心配までできる奴は居ないんだが、セルカは流石だな。伊達に旅はしてきてないか」


「木も無い、見通しも良いと言うことは、目印も無く景色でも判別出来んということじゃ。しかも水は問題ないにしても食料が手に入らぬ、これほど遭難が恐ろしい場所も無かろう」


「確かにな、森の中なら動物狩って食うこともできるが、砂漠じゃそうもいかねぇしな。おかげで魔獣が殆ど居なくて助かるんだけどな」


 動物が多いということはそれだけ魔獣の発生も増える。遭難した時の事なぞ想像したくも無いが、危険という点では結局どっちもどっちだろう。

 その後、何度か休憩を挟みつつ順調に山へと近づいてきた。道中喋るのはワシとアレックス、そしてジョーンズぐらい。

 インディが無口なのは知っているが、カルンは暑さが堪えてるのか、こちらが話しかけても俯いて生返事を繰り返すだけだった。


「よし、この砂丘を超えたら管理小屋があるはずだ」


 日が傾き砂漠が赤く染まるころ、アレックスがそう叫ぶ。見れば山はもうすぐそこまで迫っていた。

 さすがに疲れが出てきたのか、カルンが何度か足を滑らす。


「ほれ、手を出すのじゃ。砂丘の上まで引いてやろう」


「え!あう、はい…」


 おずおずと手を差し出すカルンの顔は真っ赤だったが、夕暮れのせいだろう、と気にせず前を向いて歩きだす。

 アレックスらおっさん三人組がニヤニヤしてこちらを見ていることは終ぞ知ることはなかった。





やっとダンジョン(まだ見えてない)

これで章タイトル詐欺は回避された!


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