3442手間
話がひと段落したところで、やはり目につくのは目の前の惨状。
悪酔いというものに慣れていない者も多いのか、まるで戦場のど真ん中で魔法でも撃ち込まれたかのような様相だ。
「仕方がないのぉ」
「いったい何を?」
これが完全な自業自得ならば放っておいたところだが、初めての酒だったので気を付けるべきだったが、自分たちが造った酒以外を今まで知らなかったのだ、ついいつもと同じように飲んでしまったのは致し方ないこと。
彼らに向かって手をかざし、法術で彼らの回復を手伝ってやる。
「(何したの?)」
「なに、ちょいとマナを与えて、はよう回復させてやっただけじゃよ」
「そんなことが……」
「とはいえ完全にでは反省もせんじゃろうからの、動ける程度じゃ」
今まで呻き倒れ伏していた者たちが体を起こし、頭を振って今まで自分を蝕んでいた気持ち悪さが消えたことを不思議そうに自分の身体に触れている。
「おぉ、なんか知らないが体が軽くなった」
「新しいお酒も悪くは無かったが、こんな思いをするなら、私はいつものでいいな……」
起き上がり口々にいろいろ言っているが、決して酒そのものを止めようなどと言うものはおらず、痛い目を見ていてとも思ったが、人とはまぁそんなものかとため息をつく。
「さて、折角じゃ、おぬしらの畑なども見せてもらえんかの?」
「む? それはいいが、その前に食事にしないか?」
「ふむ? もうそんな時間じゃったか」
空を見上げれば陽は既に天頂にたどり着いており、ちょうど昼飯時といったところか。
「なればお言葉に甘えようかの」
「分かった。それじゃあ片付けるから少し待っていてくれ」
ワシらは自分の食事を用意しているが、御馳走してくれると言うのならば断わるのも失礼だろう。
とはいえその前にここを片付けるからと、彼が茶の容器などを片付けるのを大人しく待つことにするのだった……




