3441手間
ワシが悪酔いしていないスゴアルアドと酒の話をしている内に、水を飲んで人心地ついたスゴアルアドたちであるが、やはりまだ気持ち悪いようで、テーブルに伏せたまま呻いている者が大半だ。
身の回りにこれほどまでに酒に弱い者がいないので、これが本当に酒に弱い者の反応かどうかは分からないのだが、もしかしたら果実酒に殊更弱いのかもしれない。
「ふぅむ、これほど悪酔いするとなると、果実酒と相性が悪いのやもしれんのぉ」
「いやいやいや、それはない。いつも飲むものより大分酒精がきついから、それになれていないだけだ」
相性が悪いならば飲まない方がいい、そういわれると思ったのか、事実そう考えていたから正しいのだが、慌てて慣れてないだけだと彼は弁明する。
まぁ、酒好きが酒を取り上げられそうになれば、そんな反応をするのも仕方ないかもしれないが、流石にこれを飲んで死人が出たとなると色々とまずいのだと言えば、話を聞いていたスゴアルアドたちは渋い顔をする。
「確かに、あの家で造った酒で腹を壊したなんてなったら……」
「たしか二代ほどの間、その家は酒造り禁止だったか?」
「しかも、壁にも刻まれるはずだ」
「この集落に移ってからは、酒造禁止は言い渡されるような事態になってはいないが」
「そっちではどうなるんだ?」
「ん? ワシかえ?」
ちゃんと酒関連の問題を起こした時の掟などもあるのかと感心していると、急にワシに話を振ってきたが、さて法の上ではどうなっていたかと首をひねる。
「こちらでは、酒は決められた家でしか造れぬからの。もしそこで飲んだ皆が腹を下したなどと言う話が出れば、造ってる酒なども廃棄になるじゃろうなぁ」
「そんな勿体ない事を…… いや、腹を下した回の酒はそんなものか」
同じ樽で造ったのならば、当然同じことになる可能性がある。
ただ単に買った者の家での保存状態が悪かったからならば、特にお咎めもないであろうが、同じ酒を飲んだ者が同じような症状を訴えれば、まず間違いなくしばらくは酒造禁止などの厳しい沙汰が下されるだろう。
そしてもしそれが王家に売った物であれば、下手をすれば処刑などの事態にもなりかねない。
「被害が多ければ、おぬしらと同じように酒を造ることを禁止されたりするのぉ」
「やはり同じような結論になるか」
「そうじゃな」
流石に処刑云々はわざわざ言うような話でもないので濁して言えば、彼はしたり顔で別々の所でも同じ事には同じ事をするのだなと腕を組み何度も頷くのだった……




