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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3464/3465

3440手間

 酒を造るにはそれなりに時間が掛かるが、そも果汁などを酒にする発酵の期間というのは存外短い。

 長いのはそこから熟成させる期間であり、そういった工程のないスゴアルアドたちの酒はすぐに飲めるのではないだろうか。


「今は芽が出た実を乾かしてるから、これを粉にして煮て濾して、そっからまぁ早ければ七日ほど、長くともひと月は掛からない」


「ふむ、その辺りは果実酒とさして変わらぬのじゃな」


「十巡りも掛かるんじゃないのか?」


「それは酒にした後に熟成させる期間じゃな、この果実酒は出来たては角が立っておるからの、時間を掛けてその角を取るのじゃよ」


「なるほど」


 確かに熟成期間が長いものは旨いが、単純に長いだけでは旨い果実酒が出来る訳でもない。

 神国の物ではないが、前に百巡り以上前の果実酒というものを飲んだことがあるのだが、恐らく保存状態が悪かったのか土を飲んでいるような味だった。

 

「百巡り前の酒か…… それが残っているなんて、どれだけしっかり栓と封をしていたんだろうな」


「さてのぉ。確かその酒は、土砂崩れに飲まれた町から見つかったものじゃったかの」


「酒を飲むために、わざわざ土に飲まれた家を掘り起こしたのか?」


「いや、何ぞ別の目的じゃったはずじゃ…… 確か、その村の教会に何ぞ重要な物があったらしく、それを持ち出すために掘っておった時にたまたま見つかったんじゃったかの」


「そうだったのか、しかし、よくそんな珍しい物を飲むことができたな」


「その土地の持ち主がワシじゃったからの、掘り出したのが商人ではなかったのもあって、ワシの土地で見つかった物じゃからと献上されたのじゃよ」


「ふぅん?」


 もし売りに出されていたとしたら、ワシはその果実酒を飲むことは無かったであろう。

 たかだか百巡り程度、わざわざ買う必要もないと考えていたであろうし、もし飲みたいのであれば良い巡りの果実酒を取っておくように言えばよいだけだ。

 

「なんにせよ、長いから良いという訳でもないしの。十か二十程度が丁度よいのかもしれないのじゃ」


「はぁ、お酒ってそんなに長く持つんですね」


「物に由るじゃろうし、この酒のようにしっかりと封をしたりせねばすぐに悪くなるじゃろうがの」


 適当な壺にでも入れていれは、すぐに蒸発してしまうであろうし、カビが生えたりもするだろう。

 

「うーん、こんなにピッタリと蓋をできる物もないし、保管するのは無理だろうな」


「酒によっては保管するのに向かぬ物もあるじゃろうし、そう無理して保管する必要もなかろう」


「長く保管できれば、長く酒を飲めれると思ったんだがなぁ」


「あまり栓を開けては飲んで、また封をしてと言う飲み方は出来ぬぞ?」


「そうなのか、まぁ下手に手を加えると酒が駄目になるだろうしな」


 栓を抜いてまた栓をしてとやると、さほど長い期間は保管できない。

 それにどうせ保管したところで直ぐに飲み干しそうだと言えば、スゴアルアドは苦笑いで確かにとワシの言葉に同意するのだった……

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