3439手間
酒は好きだが酒に弱いスゴアルアドたちは、果実酒を舐める程度の量を呷り、今は場末の酒場の閉店間際のような惨状になっている。
その様子を見てアラクネの子は引くことなく心配しているが、気にせんでも良いと頭を撫でてやる。
「(でも苦しそう)」
「酒に弱い者が酒を飲んだり、酒に強かろうと飲み過ぎるとこうなるのじゃ。まぁ死にはせんから大丈夫じゃろう」
「(この人たちは、こうなるって知らなかったの?)」
「いや、酒を飲むならば知っておるはずじゃ」
「(じゃあ、どうしてこうなるって知ってるのに飲むの?)」
「今回は致し方ないが、酒を飲むのは酔った時の高揚感やらが良いらしいのぉ」
「(らしい?)」
「ワシは酔うことは無いからの」
酒を飲めば誰しも多少の違いはあれども、酔っ払い高揚感や判断力の低下やらと、色々と考える部分に支障が出るのが常であるが、ワシにとっては酒精のある飲み物でしかない。
水やら茶と変わらぬので、酒に執着する者の気持ちはさっぱりと分からない。
「ま、しばらくすれば治るじゃろうし、放っておいても良いじゃろう」
「(早く治すにはどうしたらいいの?)」
「悪酔いに効く薬草やらはあるが、ヒューマンらに効く物が彼らにも効くかどうかは分からぬからの、むしろ毒になりかねぬから使う訳にもいかんしのぉ」
「(他には?)」
「まぁ、水を飲ませるくらいじゃが。あぁ、それは問題なさそうじゃな」
酒に弱いスゴアルアドの内でも、やはり多少は強い者はいるようで、動ける者たちが水を汲んできて寝転がっていたり、テーブルに倒れ掛かっている者たちに水を飲ませている。
「ぐぉぉ、頭が……」
「本当に酒に弱いのじゃのぉ」
「確かに強いとは思っていなかったが、これほどまでに潰れるのは初めてだ」
いつもと同じ感じで飲んだ結果がこのありさまだと言うが、彼らが普段から飲んでいる酒はどれだけ弱いのか、ここまで劇的な反応を見せられると気になるなと、無事なスゴアルアドに酒は大体どの時期に出来るのかと聞いてみるのだった……




