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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3428手間

 多少冷ましたとはいえ、先程まで沸騰していた茶を飲んで熱い程度で済んでいるのだ、アラクネの子もそれなりに丈夫というか、熱いのも平気なのだろう。


「(持った時は平気だったのに)」


「そういうものでは?」


「あぁ、ワシが寒さ対策に障壁を纏わせておるからの」


 カップは金属なので当然中の物の熱を直に伝えてくる、ワシは全く気にしていなかったが、アラクネの子に掛けていた障壁でその熱も遮断してしまって、お茶の熱さに気付けなかったのだろう。

 

「色々聞きたいことはありますが、まずは私たちを見つけてどうするつもりなんだい? 見ての通り、細々と暮らしているだけだ」


 大仰に両手を広げて周囲を指し示すが、彼の言う通り身に着けている装飾品以外は、これといった産業などもなく、そもそもこんな場所だ、暮らしていけるだけ御の字なのは見てわかる。


「辺鄙な所に住んでおろうと、周囲に害悪をまき散らすならば…… 分かるであろう? まぁ、幸いなことにおぬしらは善良で礼儀正しい、その生活を助けることはあっても、脅かすことは無いじゃろう」


「それなら良いんだ。私たちも、誰かの生活を脅かしたい訳ではないからね」


「ところで、おぬしらはアラクネと取引しておるようじゃが、なんのためにしておるのじゃ?」


「アラクネ? あぁ、そのお嬢さんたちはそういう名なのか。そうだな、装飾品に使ったり、あとは魔物が寄ってこないようにする、呪い用だ。彼女たちの糸は呪いと相性が良くてね」


「なるほど。この子らの人除けの幻術も糸に掛けるらしいからの、相性が良いのじゃろう」


 彼らは糸の代わりに、アラクネたちに山で掘りだした宝石を渡す。

 これも幻術と相性が良いらしいので、お互いにお互いが欲しい物を渡すという実に理想的な取引をしているようだ。


「しかし、彼女たちはなかなか捕まらなくてね、取引といっても本当に数えるほどしか出来ていないんだ」


「彼女たちは縄張りを移動する必要があるときにだけ、取引するようじゃしの」


「なるほど、そんな理由だったのか」


「(今回は急いで引っ越したから、そんな暇がなかったのかも)」


「大丈夫なのかい?」


「それに関しては大丈夫じゃ、彼女たちが縄張りを引き払う原因はワシが排除したからの」


「そうか、それは良かった。しかし、それならば新しい糸を手に入れれるかな」


「(私は縄張りから出てきたからわかんない)」


 新しい縄張りを作ったのなら、糸を仕入れるいい機会ではないか、そう思って彼はちらりとアラクネの子を見るが、彼女は私は家出してきたから取引は出来ないと首を横に振れば、彼はそれは残念だと呟き、肩を落としたい気分だろうに、眉を下げるに留めるのだった……

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