3422手間
ほんのわずかに地面に残る足跡を辿ってゆけば、実に巧妙に強い風や吹雪などを避けるような、山の影になる場所を蛇のような道が続いていた。
「(何を見て先に進んでるの?)」
「比較的新しい足跡じゃな」
「(それって、見てわかるようなものなの?)」
「簡単な見方であれば…… ほれ、ここなど足跡の上から別の足跡が付いておるのが分かるであろう? こんな風に一番上にあるモノが一番新しい足跡と分かるじゃろう?」
「(へぇー)」
下にある葉よりも上にある葉の方が新しい、そんな初歩的な事であるが、こういったことを知るのも初めてであろうアラクネの子は素直にワシの話に感心している。
そしてこの足跡の主も、何らかの外敵、もしくは追われるような経験など皆無なのであろう、足跡からは一切の警戒心などは感じず、隠すつもりもないようだ。
足跡の大きさや深さから、ヒューマンより大柄だが、オークよりも小柄であることが分かり、この足跡の主は山の上の人だと考えていいだろう。
「(足跡一つで、そんなことまで分かるんだ)」
「大体であるがの。大きな生き物ほど足跡は大きく、深く沈むからの、そこを見て体の大きさを判断するんじゃ」
「(足跡が大きく?)」
「まぁ、そこは基本的にということじゃな」
アラクネの子は自分の足を見て首を傾げている。
確かにアラクネの中でも大きな子たちはワシより大きいが、足跡はワシよりも圧倒的に小さい。
「足の数が多い場合は足跡も小さくなるからの。とはいえおぬしらほど大きくなるものは珍しいがの」
「(確かに、私たちみたいに足の多い生き物は足がちっちゃい)」
「であろう? ま、何にせよこの足跡の主は山の上の人のようじゃからの」
「(じゃあ早く行こう!)」
「そうじゃな」
ぴょいっと足跡を覗き込んでいた体を跳ね上げ、足跡をたどって先に先に行くアラクネの子と共に行けば、ほどなくして先ほど見た放棄された集落と同じような家屋が山々の隙間にひっそりと立ち並ぶのが見えるのだった……




