3421手間
張り切ったからと言って見つかるわけでもなく、頭の上で段々とやる気を失っていくのが目で見ずとも分かる。
だがやる気を失うそのその気持ちも分かる、目の前に広がる雄大な景色とは即ち広い大地であるわけで、その中で目当てのモノを探そうと言うのは考えただけで憂鬱になる。
とはいえ居るとしたらこの尾根の付近であろう、何せさらに奥へと行けばさらに高く急峻な黒曜石のように鋭い山々が広がっており、環境もそうだが行き来するだけで命懸けなのは目に見えており、そんな場所を住処にするような者は居ないだろう。
であれば、アラクネと交流しやすく、比較的天候が安定している海側に住処を定めているのではないだろうか。
何より、ドワーフのように洞窟などに住んでいたらお手上げだったが、先程の集落跡を見る限り、ワシらと同じように外に住んでいるので、痕跡さえあれば探すのは容易い。
「(いないねー)」
「どこに住んで居るなどは知らんからのぉ。さっきの集落跡を見つけれただけでも、十分な大手柄じゃぞ」
ワシらにあるのは曖昧な容姿だけであり、どこに住んでいるのかなどもワシの予想に過ぎない。
それだけの手掛かりだったのが、あの集落跡を見つけたことで山の上の人かはともかく、何者かがそれなりの人数で住んでいることが分かった、これを見つけたのは大手柄だと褒めれば、アラクネの子は再び上機嫌になってまた何かあるかと熱心に探し始めた。
「(ねぇ、あれは何かな)」
「あれは…… 割れた岩かのぉ」
アラクネの子がワシの視界にしゅっと入ってくると、指を刺して何か見つけた方向を指差すが、恐らくはどこからか転がり落ちた岩が割れただけのようだった。
「(むぅ)」
「ま、気になったモノはどんどん言うがよい」
「(うんっ)」
こんなことでやる気を削がせるのも可哀そうであるし、彼女がすることを否定はせず、あれもこれもと手当たり次第にとはならない程度に留めておくが。
そうこうしている内に、やや尾根が下り坂となった先、丁度尾根が再び登り坂となり始めた谷の辺りに、ほんのわずかであるが誰かが何度も通った跡を見つけた。
しかし、アラクネの子は気付いていないらしく、見つけれるようにとゆっくりと坂を下っていったが近づいたところでも、やはり見つけれていないが致し方ない。
彼女たちは狩りを生業としている訳でもないので、獲物の痕跡を探す技能などもないであろうし、ここは仕方ないと獣道でワシは立ち止まる。
「ほれ、ここを見てみよ」
「(ん? 何も無いよ)」
「一見何もないが、ほれ、ここを誰かが何度も行き来しておる跡があるじゃろう」
「(あ、ほんとだ、ここだけ地面がちょっと平らになってる)」
「であろう? つまりは誰かが近くに居るという訳じゃ」
日常的に使われている形跡はないが、大体ここひと月の内に一、二度は使われているはずだ。
そうワシが言えば、アラクネの子は目をキラキラさせてすぐに道の先へ行こうと地面に居りて、ワシの裾をぐいぐいと引っ張るのだった……




