表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3427/3479

3403手間

 ワシをじっと見上げている子は、パッと見て四歳か五歳くらいの体格であるが、その見た目は幼児特有の丸さはなく、体の大きさに目を瞑れば青年期の初め頃、幼さと凛々しさを合わせたような時期の姿だ。

 それだけでもある種の異様さを醸し出しているが、近侍の子らが飛び上がるほどに驚いたのは彼女の下半身、つい先日まで話題に出していた蜘蛛のような姿を持っていたからだ。

 そして当然近侍の子らがそれほど驚いたのだ、部屋の入り口付近に立っていた近衛たちも駆けつけてくるが、彼らは驚きの声を上げたかと思うと近衛の一人が慌てて外套を外してアラクネの子の肩にかけてやる。


「咄嗟にその行動が出来るのは流石じゃのぉ…… まぁ、森の中でならばともかく、ここでその恰好は何であるしの。上だけで構わぬから、この子の体格に合う服を持ってきてくれるかの」


「そうさせて頂きたいのは、やまやまでございますが…… 私が行くと色々と憶測を呼びそうでございますので」


「ふむ、そうじゃな」


「あ、じゃあ、私が行ってきます。サイズが合わなくなった服があるので、それ持ってきます」


「んむ」


 外套を羽織らせた近衛に、アラクネの子が着れる服を持ってくるよう指示するが、彼は申し訳なさそうな顔で、自分が取りに行くと色々と不味いと取りに行くのを辞退したところ、近侍の子の一人が自分のお古を持ってくると言って飛び出していった。


「これ、いえ、この子がアラクネですか」


「そうじゃ、そうなのじゃが」


 アラクネの子は近侍の子らが驚いた辺りからじっと動くことなく、ずっとこちらを見上げている。


「確か思念で会話するとのことでしたが、今もされているのでしょうか?」


「いや、さっきからずっと無言じゃの」


 近侍の子が言うように、思念でのみ会話するならば、確かに他から見ればずっと無言でいるように見えてもおかしくはない。

 しかし、ワシにも彼女の声は聞こえず、本当にさっきからずっと無言でこちらを見上げているのだ。

 森で出会ったアラクネたちよりもかなり小さいので、その体格相応であれば彼女は会話がまだできなかったり、苦手なのかもしれない。

 そう思いしばらく待ってみたが、やはりじっと見上げるばかりで無言を貫いている。


「もしや」


 まさかと思い彼女の目の前で、さっさと手を振ってみれば、それに対しても彼女は無反応。


「これ、もしかして気絶してますか?」


「そのようじゃな……」


 体を支える足が八本もあるからか、気を失って尚ずっと立っていたようだ。

 とはいえこのままにしてはいけないだろうと、彼女をそっと抱き上げソファの上に下ろしてやる。


「おぬしらは、文官や侍女たちが入らぬように外で待機しておれ」


「はっ」


 近衛たちに先ほど服を取りに行った近侍の子以外を中に入れぬように厳命し、ワシらはとりあえず彼女が起きるまで、静かに彼女を観察することにするのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ