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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3401手間

 自分たちとは異なる者との衝突、それは大小関わらず往々にしてある事で、事実、神国と王国もそれが原因で戦を長くしていた。

 ヒューマン同士でもそれなのだ、アラクネやリザードマン、下手をすればダークエルフ程度の違いでも、その違いを理由に攻撃をしかねない。

 特に冒険者たちのような血気盛んな連中であれば、手柄欲しさに余計なちょっかいを仕掛けて、手痛いしっぺ返しを食らうのが目に見えている。


「それを防ぐならば、新しく法を作るか現行の法に追加するしかないけれども、どういうモノを作るかが問題になるね」


「現行の法に追加するのが良いと思うのじゃが、追加するに良い法はあるかのぉ」


「ヒューマン以外の種族に対しての迫害や、一方的な略奪行為などの禁止だろう? その辺りの条文にヒューマン以外を盛り込むのが一番容易いとは思うけれども、種族というのをどう定義すればいいか」


「それが問題じゃのぉ」


 アラクネやリザードマンなどの、ヒューマンとの身体的特徴が大きく異なる者たちをどう定義するか。

 異形と一括りにしてしまえば、当然ゴブリンなどの魔物も含まれてしまうし、逆にアラクネやリザードマンを魔物だとして排除や搾取などの非道な行為に走るかもしれない。

 

「友好的? いや、これも駄目だな。密かに手を回して、こちらを攻撃させるように仕向けたら、あいつらは友好的じゃないと見せかける事なんて簡単か」


「知恵も駄目じゃな。そんなものはある程度、交流せねば分からぬ事であるし、阿呆はどこにでもおるからの」


「これは、思っていた以上に難しい問題だが、これをどうにかしないと、もっと大きな問題になるのが目に見えているからなぁ……」


 クリスが苦虫を嚙み潰したような顔で眉間にしわを寄せ、そのしわをもみほぐすように額に手を当て天を仰ぐ。

 どう考えても、こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たずといった案しか出てこず、曖昧にすれば確実にその隙間を狙って悪事を働く者が出てくるのが目に見えている。

 だからといっておざなりにすれば、少数でもヒューマンを圧倒できる者たちの恨みを買った時が恐ろしい。

 現にアラクネたちが反旗を翻せば、こちらが気付かぬうちに何百、何千という街や村々を滅ぼすのだって容易であろう。

 人除けの幻術でこちらが一切気付かぬうちに拠点を築き、そこを起点として各地を荒らしまわる姿が容易く想像できる。

 

「よい方法を思いついたぞ」


「ほう? それはどんなやり方じゃ?」


「父上と文官たちに任せよう」


「いや、まぁ、確かにそれが一番確実であろうが、それでいいのかえ?」


「この領だけならばともかく、国全体となるとやはり普段から国政を動かしている者たちに任せるのが一番だろう」


「クリスも一応は国政に関しておるじゃろうに……」


「確かに一部任されてはいるけれども、神都との距離の関係上、喫緊の課題などはないからね」


「ま、ワシとしてもその案に賛成じゃ」


「でれば早速取り掛かろう」


 自分の肩の荷を下ろす算段を見つけたからか、クリスは先程まで刻んでいた眉間のしわなどなかったかのように、嬉々とした様子でアラクネたちの報告とそれに関する新法案作成の提案を報告書にしたためて行くのだった……

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