3388手間
きゃらきゃらと喋る彼女たちの会話から抜き出すに、彼女たちの主食は木の実や果実。
木々についていた網は、熟したそれらが落ちてきたのを受け止めたり、万が一残っていた他の小動物が齧らないようにする為の物のようだ。
「(あとお花)」
「(水辺に咲く花も好き)」
「(きれいな水ならなおよし)」
「(きれいな花なら、なおなおよし)」
「そうかえ」
何にせよ木の実や花が主食ならば、ワシらにとって全く以って無害ということだろう。
臆病な彼女たちが喜ぶかどうかは甚だ疑問ではあるものの、良き隣人として付き合うのも悪くはないやもしれない。
まぁ、上半身は文句のつけようのない美人や美少女であるのだが、下半身が完全に蜘蛛なので、それを厭う者は出そうだが。
「ところで、獣除けの術はいつ完成するのかの」
「(たぶんもうすぐ?)」
「(もうちょっとかかるかも)」
「(早く作りたい)」
「ふむ……」
全く以っていつになるか分からない、一応身振り手振りでも指し示してはいるのだが、両手をばたばたしているだけのようにしか見えず、こちらでもやはりさっぱり分からない。
彼女たちは時間など関係ないし、そういった概念そのものが無くても致し方ないが、焦っていない彼女たちの様子を見るに、そこまで時間はかからないだろう。
「おぬしらはその術が出来たら、その外には出てこんのかえ?」
「(そんな怖いことしないよ)」
「(でっかいのはわんわん吠えてくるし)」
「(ちっちゃいのは、私たちが集めた木の実を持って行っちゃうし)」
「(みどりの変なのは追っかけてくるし)」
「そうかえ」
彼女たちの思念からは獣の除けの幻術の外には絶対に出ないという、頑なな意思を感じる。
幻術が完成すれば、ワシ以外は中に入れないであろうし、放っておいても大丈夫そうかと、次はホブゴブリンが入ってこないようにするんだなどと気合を入れている彼女たちを優しく見守るのだった……




