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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3409/3457

3385手間

 じっとワシを覗き込んでくる上半身が人で下半身が蜘蛛のアラクネの顔は、そこだけ見れば何ら人とは変わりない。

 蜘蛛のように眼が八つあるわけでもなく、ルビーのように透き通った赤の瞳に、病的なまでに白い肌、そして絹糸、いや、蜘蛛糸のように白く光の当たり加減で虹色に光る髪。

 なるほど、振り返った一瞬だけ見て騎士が美人だったと断じるのも分かるほど整った顔だ。

 ほう、とワシが関心しているのと対照的に、作り物めいて整った顔は「なんで?」という疑問を隠しもしない表情に変化していく。

 正確に言えば、「なんで?」という思考も全く隠せていないが、これにはワシも何でと首を傾げたい。

 

「ふむ?」


 ワシも言葉に乗った思考を読むことは出来るし、集中すればある程度、相手が何を考えてるか表面的なモノも感じることは出来る。

 だが声を発してるでもなく、読もうとするでもなく、直接聞こえるように相手の思考が抜けてくると言うのは初めてだ。

 

「ところで、ワシの言葉は分かるかの」


 厳密には言葉ではなくそこに乗っている思考であるが、突然話しかけられて驚いたのだろう、びゃっと飛び上がるように木の影に隠れてしまった。

 

「うぅむ、今の反応では言葉が分かっておるかどうか、分からぬのぉ」


 今まで隔絶されていたような者たちだ、言葉が通じないのは当然だが、そこに乗せられた意思というのは全く同じであろうし、聞く分には問題がないはず。

 こちらの一方的な問いかけとて、「はい」か「いいえ」だけ分かれば極論会話は出来るのだ。


「さっきも言うたが、おぬしらをどうこうしようとはしておらぬ」


「(あいつ、私の術が効かなかった)」


「ふむ?」


 ワシの言葉に反応してではなく、ただ単に同胞に話しかけただけなのだろう、彼女らの内の一人の思念が聞こえた。

 これはなるほど、音ではなく思念だけで会話する種族なのだろうか、ワシのようにそこにある思念を読めるような者がいなければ、これほど静かに会話できる術もないだろう。


「(どうする? どうやって出て行ってもらう?)」


「(そんなこと出来る? 前に見たピカピカの奴も大変だったじゃない)」


「(アレよりは軽そうだけど)」


「(でも術が効かなかったのよ?)」


「(糸でぐるぐる巻きにする?)」


「(そうしよう)」


 一度堰を切れば姦しいのは種族関係なく同じなのか、そんな事を考えている内に、彼女たちはワシの周りに集まるとワシに位置を吹き付け、くるくるとワシの周囲を回ってワシの身体を蜘蛛糸で簀巻きにし始めるのだった……

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