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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3379手間

 獣にすら出遭わない地点に騎士たちを向かわせ数日、最初に送られてきた報告書は多少子細が追加されている程度で、冒険者たちの物とさしたる違いは無かった。

 ゴブリンを始めとした魔物はもちろん、狼などの獣にも遭遇しなかったという単純なモノだ、しかし、その様子が変わってきたのは更に数日が経ってからだった。

 厳密に言えば魔物も獣も居ないという報告自体は変わっていないのだが、それを挙げる騎士たちの受ける印象が変わってきたのだ。


「鳥も小動物もおらず静かで不気味、のぉ……」


「森というのは、そもそも静かなモノ、なのではないのですか?」


「確かに街中に比べれば静かであろうが、森というのは存外やかましいものじゃぞ。鳥の囀る声や、小さな獣たちが駆けまわる音などのぉ。こんな分かりやすい事は最初に書いておいて欲しかったが、ふぅむ、一体何が起きておるのじゃ」


「食べる物が無くなって他に移動した、とかでしょうか?」


「確かに食うものが無くて移動するということは、ままあるが…… それならば、移動した先で騒ぎになるはずじゃ、魔物や獣が増えたとな」


「言われてみれば、仰られる通りでございます。どこかに行ったのならば行った先で目撃されるはず……」


「しかし、減ったという報告だけで、増えたという報告はない」


 つまり何が原因かは分からないが、逃げる間もなく減らされたということだ。

 単純に考えれば圧倒的な捕食者が現れたということであろうが、騎士たちも冒険者たちもそういった存在には遭遇していない。

 もちろん頂点捕食者だからといって誰も彼も好戦的という訳ではなく、武装している騎士たちや冒険者たちを危険と判断し襲わず身も晒さなかっただけやもしれないが。

 

「魔物や獣を一掃する捕食者ですか…… そんなモノが鹿などであれば分かりますが、小鳥なども食べるのでしょうか」


「小鳥なんぞは逃げたのじゃろうな。騎士らもそうじゃが、冒険者たちの報告書を読んでも、小鳥の数など気にしておらんようじゃからの」


 鳥すらいないという騎士たちの報告も、ただ単に鳴き声が聞こえないと言うだけで、見たりしている訳ではないのだから。


「存外、小さく弱々しい者たちの方がどこへでも行けるものじゃ。貴族は領地や家を離れて暮らすは難しいが、平民は大抵どこでも生きれるじゃろう。無論、安定した生活を捨てれるなればじゃが」


「なるほど、身軽な小動物は逃げれるが、大きな獣は逃げるのが難しいと」


「まぁそうじゃな」


 縄張りなどもそうだが、体が大きければ大きいほど、食べる量も増えてくる。

 これは肉食、草食どちらでも同じことで、生きていける場所というのは存外捕食者の頂点程狭くなってゆく。

 そしてもし新たな頂点捕食者によってその周辺が食い散らかされたというのであれば、間違いなく腹を満たす為にさらに周辺へと進出してくるのは目に見えている。

 ならば魔物や獣が標的になっている内に、その頂点捕食者が何者か、場合によっては討伐せねば人にも被害が出て来るやもしれないと、そうなる前に内緒せねばとワシは騎士たちの増員を命じるのだった……

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