3378手間
仕事を真面目にする者というのは、騎士であろうと兵士であろうと冒険者たちであろうとも同じように存在し、その中でもやはり性格は出てくるもので、何度も報告を受けているとそれが誰かも知らないが、同じ人物の物であろうと言うのは分かってくる。
例えば巡回中に倒した魔物の数をきっちりと報告する者としない者、する者の中でもさらに現れた場所まで明記する者、大体の場所だけ書く者などだ。
報告を受ける側からすればすべて明記しておいて欲しいが、騎士や兵なればともかく冒険者たちにそこまで求めようとするならば、追加で依頼料が必要になるだろう。
「ふむ? 今回の報告にはいつもの奴が居らんのかえ」
「いつもと同じはずでございますが?」
「そうなのかえ?」
いつもは明細に書く者がおらず、毎回きっちりと報告の一番最初に載っていたのもあって不思議に思い文官に聞いてみたが、彼は逆にちゃんとその者は報告を挙げていると首を傾げる。
「はい、今回も報告書の最初に」
「あぁ、これかえ。珍しいのぉ、彼…かは知らぬが、毎回倒した魔物はもちろん、見かけた獣まで書いておったじゃろうに」
「そういう時もあるのではないでしょうか?」
「ふぅむ…… まぁそうじゃな」
依頼ではある程度の場所だけ指定しているので、向かった場所によっては全く出会わないこともあるだろうと、文官の簡単な答えに納得する。
しかしそれは一回であればの話で、後日きた報告でもそして二回、三回と続けばそれは逆に異変であるのではないかと眉根を寄せる事になった。
「間を開けての報告で同じものが続けば、これは流石に確認せねばならぬじゃろう」
「ですが、異常がないのは良い事なのではないでしょうか」
「街中であればの。森の中で魔物はともかく、獣にすら合わぬことが続くのは明らかに異常じゃ。そうじゃの、通りに人っ子一人居らんかったとしても一度であれば、偶然そんな時に居合わせたと思えるじゃろうが、それが続けばおかしいであろう」
「確かに、仰られる通りでございます」
森の中で獣に合うと言うのは、街中で人とすれ違うようなものだ、通りに人がいない時に行ったとしても偶然で片付けられるが、それが続けば流石に偶然などではなく、そこで何かが起きたと確定しても良い。
「では、騎士たちに向かわせますが、依頼はどういたしましょうか」
「一所に集中しても良くはないそろそろ変えてもおかしくはない時期じゃ、場所を変えたとしても怪しまれぬじゃろう」
「かしこまりました」
見回りなのだから場所を変えねばならない、そういう意味でも丁度良いと、何も無かった場所に騎士たちに向かわせ、冒険者たちには新しい場所の巡回を始めるように指示を出すのだった……




