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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第二章 女神の願いでダンジョンへ
34/3463

33手間

 西門ですでに慣れた入門手続きをし、街中の目的地で荷卸しを手伝って、今回の護衛依頼は終了。


「んんー、ここら辺も変わっておらんのぉ…」


「コン!」


 肩にぶら下がるスズリの鳴き声にあわせ、伸びを一つしてから久々の道を歩きギルドへと向かう。

 あれから三巡り弱、技術の発展も少ないこの世界ではその程度ではあまり変わらぬかと周りを眺めながら歩く。


「街並みは特に変わっとらんが、人が増えとる気がするの…?」


 未だ慣れてないのか、人の多いところに行くとスズリは尻尾に隠れてしまう。

 そこまで長く居たわけでもなし、そういう事もあるかとそれ以上気にすることなく歩きギルドに到着した。


「いらっしゃ…あーーー!!!セルカちゃん久しぶり!いつ帰ってきたの?帰ってきたのならおしえてよー!」


 ギルドに入ったとたん、掃き掃除をしてたらしい箒を持った受付嬢のフリーに大声をあげられる。

 その声に、人通りが落ち着き尻尾からここ暫くの定位置である肩にぶら下がっていたスズリが硬直し、地面に落ちてしまった。

 その声にびっくりしている他のハンターなどの視線を集めつつ、落ちてしまったスズリを拾い上げ、頭にのせてやる。


「そんなに大声を出すでない、スズリもびっくりして固まってしもうたではないか。それに街には先ほど着いたばかりじゃ。いの一番にここに来たのじゃぞ?」


「あはは、ごめんごめん」と言いそそくさと掃除道具を片付け、受付に戻ったフリーが改めて話しかけてくる。


「それじゃ、本日のご用件は何かな?」


「んむ、十五になったでな、ダンジョンに入る許可をもらいに来たのじゃ」


「おー、そういえば今の巡りで十五歳だったわね、おめでとう。あれ?でも、もう二月ほど経ってるし許可はすでに他のギルドでもらったりしてないの?」


 いわれた通り今は一期の末の月、しようと思えば初の月の内にどこかのギルドで貰えること自体は可能だった。


「んむ、折角じゃから登録をしたこのギルドでと思っての」


「あらあら、それは光栄ね。それじゃ手続きの用意をしてくるからちょっと待っててね」


 そういって奥に向かうフリーを見送り、手近なところに座ろうとしていると、すぐにフリーが戻ってきた。


「あ、セルカちゃんちょっといいかな?」


「ん?ダンジョンの許可にでも問題でもあったのかの?」


「あ、それは大丈夫なんだけどね、ギルド長が話があるって」


「む、またなんぞ厄介ごとかの…?」


「そんな雰囲気じゃなかったし、大丈夫じゃない…?たぶん」


 呼び出しという言葉に以前の事を思い出し、訝しんだ顔でそう答えればフリーはちょっと自信なさそうにたぶんと付け加えてくる。

 まぁ、よいかとフリーの案内でギルド長室前まで来ると、フリーが「それじゃ」といって受付に戻っていくのを見送って扉を開ける。


「よう、久しぶりだなセルカ。三巡りぶりくらいか?」


 熊のような男が扉を開けるなり声をかけてくる。


「だいたいそのくらいかの?そちらは変わりないかえ?」


「相変わらず十二…じゃねえやもう十五か、どっちにしろ年相応の返しじゃねぇな」


「えぇ、セルカ坑道のおかげで人も増え、街が潤ってます。そのせいで一時は少し治安が悪くなりましたが、今は落ち着いてますね」


 答えを返してくれなかったギルド長クレスに代わり、そばにいた副ギルド長のイアンが答える。


「そうかそれはよかっ…ん?セルカ坑道…?なんでワシの名前が!?」


「それはですね、晶石鉱山を見つけた方はお金以外の報酬の他に、第一発見者の名前を冠する権利があるんですよ」


「いやいや、権利じゃろ?ワシは許可した覚えなぞないぞ!それにアレックスも一緒じゃったし、探索はあやつがリーダーじゃろ!?」


 自分の名を冠したものなど気恥ずかしいし、ついつい語気を荒げてしまう。


「それにつきましてはアレックスさんは辞退しましてね、新米の手柄を横取りするわけにはいかんとあなたに権利を譲ったのですよ」


「権利については分かったがそれでもワシは知らんぞい!」


「それは俺の判断だ、名前を決める段になったころお前はすでに居なかったからな。辞退したり本人が居なかった場合、本来であれば領主の名前を冠することになるのだが…」


「ならそれでよかろう?なぜワシの名前にする必要があったんじゃ」


 今度はイアンに代わりクレスが答えてくる。


「そこはお前が新米だったからだ」


 何故と問えばそんな答えが返ってきた。


「それじゃセルカさんに分かりませんよ。本来であればそうなのですが、今回は新米のセルカさんが見つけたので、新米でもしっかり働けば名が残る事ができますよ、という事を示すためにセルカさんの名前を付けました」


「ぐぎぎぎ、人のためと言われては断るに断れぬ」


 苦虫をかみつぶしたような顔をしてるとイアンがニコリと笑い「その代わり」と続けてくる。


「名前を冠している場合、本人が死ぬまでか辞退するまでの間、ほんの僅かではありますが、その鉱山からの収入の一部が入りますからね」


 鉱山の規模にもよるが、印税のようなものが入るらしい。今回はかなりの規模なので、普通に生活するには十分すぎるほどの収入があるとのこと。


「うぅむ、まぁそれなら致し方なしかの。ところで話というのはこれのことかえ?」


「いえ、これはいわばおまけですね。話は別にあります。それについてはギルド長から」


「あぁ、この鉱山を発見した功績と、そこを坑道として使用できるほどの安全を確保した功績の二つでもって、お前さんに二等級への推薦を出す」


 その言葉におぉ!と目を輝かせるが「ただし」とクレスは言い、


「このギルドで出せるのはあくまで推薦だけ、実際に二等級になるにはギルド本部まで行く必要がある」


「本部というと、世界樹にあるという話じゃったか?」


「そうだ。世界樹にあるといっても、普通は近づけないから実際は少し離れた街にあるけどな」


 イアンから推薦状を貰い、話は以上というので部屋を出て、フリーからダンジョンの許可と推薦おめでとうの言葉を貰いギルドを後にする。

 ついでにとアレックスらの事を聞いたが運の悪いことに依頼で出ているらしく、しばらく戻らないらしい。

 それに、世界樹方面へは基本護衛依頼は無いらしい。代わりに定期的に乗り合い馬車が出ていることを教えてもらった。


「次の馬車が出るのは明後日という話じゃし、明日はのんびりするかのぉ」


 そういって今日の宿をとるために街を歩くのだった。

十五歳になったセルカちゃん(見た目は一切変わってません)

まずは世界樹への旅です。

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