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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3374手間

 街に戻るにあたり、クリスとクリスと共にやってきた騎士たちは森に入る際に着ていた鎧に装飾を加え、盛装やパレードアーマーというには華やかさに欠けるが、平民に対してならむしろ華美過ぎずに丁度良いだろう。

 大楯を携えた騎士を先頭に、クロスボウは見栄えが悪いのと何より出来る限り伏せておきたいので、代わりに短槍を持った騎士が続き、馬に乗ったクリスが騎士たちに囲まれて民たちの声に笑顔で応えている。

 ワシはといえば馬車に乗り、馬車の壁一つ隔てて外の喧騒を聞いている。

 まるで戦にでも勝ったかのような騒ぎっぷりであるが、まぁ戦らしい戦などここの所は無かったのであるし、大きな慶事も無かったのだから騒ぐよい口実が出来たと、盛り上がっているのだろうか。


「ふぅむ、良い息抜きの為にも、何ぞ催し物でもやらせるのが良いかのぉ」


「お祭りですか、何を祀りますか? やはりここは神子様でございましょうか」


「皇国なればともかく、神国では流石に問題じゃろうて」


 皇国であるならば、女皇と共に信仰対象である神子ならば確かにお祭りで担ぐ御輿にはちょうど良いであろうが、明確に別の信仰対象がある神国でワシを祀るのは流石に問題があるだろうと、ウキウキと話題を出してきた近侍の子を窘める。

 とはいえ祭りというのは悪くない案だ、問題があるとすれば何を口実に祭りにするかであるが。

 パッと思いつくものであれば収穫祭であろうが、あれは農村の祭りであり、街で大々的にやるようなものではない。

 建国祭もあるにはあるが、あれは祭は祭でも祀りに近く、個々人や家族で建国した神に感謝をささげるものであり、大騒ぎするような祭ではない。

 あとは朝露祭があるが、あれは寒さが和らぐ頃に草木が芽吹き朝露が凍らなくなる頃にやる祭なので、街や村によって開催する時期や規模もまちまちであり、この街でも神都と同じ時期に一応行っているので、わざわざ改めてというのも変な話だ。


「まぁワシらだけで考える必要もないじゃろうし、後でクリスと共に考えるのも良いじゃろうが」


「何かまだご懸念が?」


「いや、祭りというのは民草のものであろうからの、ワシらからこれをやれと言うもの違うじゃろうと思っての」


 今日からこの日は祭であるから、好きに騒ぎたまえと上から言うのも違うだろう。

 もちろん祭の日と定めるから、振る舞い酒などを出すと言えば、なにが理由など特に気にせず皆喜んで祭りを楽しむであろうが。

 なので一番問題なのは貴族たちへの対応だ、王家が祭りに酒を出すとなれば彼らもまた出さなければならず、出さなければ同じ貴族たちからはもちろん、平民たちからもあの貴族はケチだなんだなどと後ろ指を刺されることになる。

 しかし当然、貴族と言えど懐具合の余裕はまちまちであり、祭りに出資できるかと言えば皆が皆はいと頷けるわけではない。

 なのでそんな者たちでも納得できるような理由がなければ難しい。


「今回の討伐の成功でよろしいのでは?」


「この一回であればよいが、平民らの息抜きになるような、後々も続くものとしては、ちと理由が弱いじゃろう」


 今回のパレードに合わせ、討伐を祝してと言うのであれば振る舞い酒を出す理由にもなるが、それは今回限りであり、また次の巡りもとなるには流石に難しい。

 これが長く代々苦しめられてきたモノを平定とかであれば、後々にも続く祭りの理由にもなろうが。

 まぁ、祭りなど無理に理由を捻りだしてやるようなものでもないかと、話をそこで切り外の喧騒に再び耳を傾けるのだった……

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