3373手間
騎士たちの熱狂の波が引いたところで、街へと引き上げる準備を始める。
今後この野営地は、定期的なホブゴブリン狩りを行う際の拠点になっていくだろう。
場合によっては巨大な個体を迎撃する為の集結点として、町まではいかずとも村や砦のようになるやもしれない。
「今後、開拓村を広げてゆく際にもこの辺りに、騎士の駐屯地があれば安全じゃな」
「確かに、丁度よい距離だね。しかし、現状の騎士団の人数を考えると、騎士よりも兵の駐屯地とした方が良いかもしれないな」
「いや、開拓村を増やすなれば騎士の増員はあり得るじゃろう、なれば騎士の駐屯地でも良いのではないかえ?」
領に置いておける騎士の数というものは、領の規模によって上限が決まっている。
基本的に領内の街や村の規模や数によって上限が変わり、大きな街が一つと中規模の町が一つ、そして鉱山に付随した村が幾つかある現状では、実は置いておける騎士の数というのはそこまで多くない。
とはいえ直轄領であり領主が王太子であるクリスなので、規模の割にはかなりの数の騎士が居るのだが。
それでも駐屯地を作ってそこに駐在させるとなると、少々騎士の数が心もとないが、開拓村を幾つも拓くとなれば騎士の増員は最優先で行われるので、数にそこまで頭を悩ませる必要はないだろう。
というよりも、その段階までにワシらは神都へと戻っているので、頭を悩ませる事になるのは主に代官たちなのだが……。
「ところで、戻ったらどうするのじゃ?」
「どうするとは?」
「討伐に出ると大々的に出発してきたのじゃろう?」
「あぁ、帰りにパレードをすることになってるよ。幸い人員に欠員も怪我もなく、しかし完全に無傷でもないからね、丁度よいだろう」
ホブゴブリンの斧やらを防いだ大楯には、歴戦とまではいかないまでも傷だらけになっている。
素人目にも戦ってきたということが分かるので、討伐してきたという示威行為にはちょうどよい。
「確かにまぁ、無傷で行って帰ってくるよりは分かりやすいからのぉ」
「セルカからしたら、それが当たり前のことなんだろうけどね」
「んむ。二万じゃろうが三万じゃろうが、ワシからすれば物の数ではないからの」
大軍勢が迫ってきたと言っても、ワシなればちょっと散歩に行くぐらいの気安さで、倒して帰ってくるだろう。
とはいえ大衆は分かりやすい見てわかるような結果を求めているので、全く以って戦が起こった事すらわからずに終わるよりも、多少は苦戦した方が安泰だと思われるのだから、全く以って難儀なことだとワシは肩をすくめ、クリスは苦笑いするのだった……




