3370手間
いくら力があり知恵があろうとも、斬首台にその首が乗ってしまえばその末路は等しく同じだ。
クリスによって残る二匹のホブゴブリンの首も落とされると、騎士たちの視線がワシに集中する。
「それをすべきはおぬしらの役目であるが、まぁ良いじゃろう。もうこの周辺にはおらんよ」
ワシの言葉を聞きほっと胸をなでおろすクリスが戻ってきて、ワシにだけ聞こえる大きさでぼそりと呟く。
「本当に周りにいないんだろうね」
「そうじゃな。正確に言えば尻尾を巻いて逃げ出したから、もうこの周辺にはおらんよ」
「それは、見逃していいのかい? 仕留めれるならば、仕留めた方がいいんじゃ」
「確かにそうであるが、ワシが今ここを離れるのも良くないじゃろう。じゃから、ここは天に運を任せるも一興じゃろうて」
ワシが離れるということは、ホブゴブリンを仕留めに行ったという事。
それでは首を落としたクリスの活躍が薄れてしまうというもの、だから残ったホブゴブリンたちの運命は天に任せてしまおうと言えば、クリスは首を捻る。
どうするかと言えば残った物を利用するだけだ、具体的に言えば奴らを追い詰めた時に使った物を再び使う。
「それは自分たちには影響はないんだろうね」
「うむ、奥に行かねば直接はの」
「そうか。では撤収しよう」
「殿下、首は如何しますか?」
「流石にハンティングトロフィーではないのだから、持って帰る必要はないだろう。それに民に討伐したと証明するためだとしても、魔物と言えど人に似ているゴブリンの頭を見せつけるのは、流石に趣味が、ね」
「かしこまりました」
そういえば、王国でゴブリン討伐の証として持ち帰るのは耳だったか鼻だったか、どちらにせよあまり趣味がいいとは言えないが、証拠はあるに越したことは無いので帰ろうとする騎士たちに待ったをかける。
「証拠があればクリスの為にもなろう」
「ですが首は……」
「そんな趣味の悪い物ではないのじゃ」
そう言ってワシがパチンと指を鳴らせば、ホブゴブリンの巨体が三つ、首も含めて燃え上がり、焼け跡には三つの魔石が転がり落ち、それを持って帰るよう指示を出すのだった……




