3363手間
クリスたちの日が変わってクリスたちの準備も終わったが、ホブゴブリンの群れの位置からして今日に行くと陽が落ちてしまうので、出発は明日の早朝ということになった。
「昨日は近いと言っていたけれど、結構遠くに居るのかい?」
「行って帰ってくるだけなれば数刻も掛からんじゃろうが、ホブゴブリンの群れを殲滅して戻るとなると、どれだけ時間がかかるか分からぬからの」
「なるほど。その巨大な個体というのは、それほど強いのか」
「どうじゃろうな。ホブゴブリンの群れをなぎ倒せる程度には強いじゃろうが、どれほどと言われると分からぬのぉ」
ワシが間引いた巨大な個体は、どれもこれも一撃で仕留めてるので、どれほどの強さかと言われると首を傾げるしかない。
あの体格だからひ弱ということは無いであろうし、最初に出遭った個体は全身傷だらけであったが、それを気にしている様子はなかった。
さらにその状態で結構な速さでこちらに襲い掛かってきたので、それなりに強いと考えていいだろう。
「やはり、最初の斉射でどれだけ動きを止めれるかが問題か」
「なればその時に、足を重点的に狙えばよかろう。魔法も使えなさそうじゃからの、距離をとれば何かを投げてくることに気を付けていれば安全じゃろうて」
巨大な個体の膂力を考えれば、腕の力だけでの投石でも十分に脅威になるだろう。
もちろん、足を射られてそこまで冷静に奴らが対処できればの話であるが。
「そうか、盾も用意いたした方がよかったな」
「今回はワシが居るから問題ないがの、騎士たちだけで対処する必要に迫られた場合は、盾とクロスボウを用意した方がよかろうて」
最初から岩などを持って投げてくるならばともかく、片手で拾える石の大きさにも限りというのはある。
そもそも周辺に手ごろな物があるとも限らないが、少なくとも片手で扱えるような大きさの物であれば、騎士たちが用意できる盾で十分に防げるだろう。
「とりあえず大楯を取り寄せさせよう」
「む? 最初にここに来た時やらに持っておらんかったかえ?」
「戦が終わった後に返却してしまってね。今は手元にないんだよ」
体をすっぽりと覆うような大楯は、今の騎士たちは持っていないとクリスは言う。
最初にこの領地に来た時や、戦の時にはあったと思うのだがと問えば、大楯が必要なさそうだと判断したから、維持費がかかる物は戦が終わってしばらくした後に全て返却したとクリスは答えた。
確かに人ほどの大きさがある大楯を何枚も遊ばせておくのは、確かにあまり良い事ではない。
無論、その余裕がないという訳ではないが、無駄な出費は控えるに越したことは無いと、返却という選択をしたクリスにワシも頷き同意するのだった……




