表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3385/3470

3361手間

 魔物を森の奥から追い立てると言っても、別にぎゃあぎゃあと騒がしくして勢子をする訳ではない。

 とはいえ追い立てられる彼らからすれば、そちらの方が随分と嬉しかったことだろう。

 奴ら、ホブゴブリンを追い立てる術は、ワシのマナと殺気の二つ、音も姿もなく奴らを追い詰める。

 獣たちには安心感を与えるが、魔物には何とも言えない不快感を与えるマナを発する魔晶石を、ワシが探し当てたホブゴブリンの群れの奥にまず設置する。

 こうすることで、獣たちの生息域には影響を与えず、ホブゴブリンの群れだけに、森の奥から逃げたくなるような気配を漂わせる。

 その何とも言えぬ不快感を伴った気配にホブゴブリンどもが気付いたところで、奴らは多少森の手前に移動する程度であり、大きく動くことは無い。

 そこで彼らの首元に今にでも噛みつきそうな獣が居るのではという幻覚を、思わず見てしまいそうな殺気を薄く当ててやる。

 

「うむ、魔晶石の気配を避けつつ、殺気から逃げ始めたの」


 魔晶石は逆に森の奥へと、殺気を避けて逃げない為の堰のようなモノだ。

 魔晶石は広範囲にばらまけるが、さっきはどうしてもワシ個人から発せなければいけない以上、横に逃げられるとそれをまた元の位置に戻してと、どうしても手間がかかる。

 なのでまずはこっちに行くのは嫌だと、そう思わせてから逃げるように仕向けたのだ。

 ならば魔晶石で一直線に野営地までといきたいが、それはそれで混乱して森の奥へと逃げ帰ってしまうかもしれないために、じわじわと追い立てる他ない。


「よしよし、網に追い立てられる魚のように、一か所に集まり始めたようじゃな」


 森の奥から段々と地引網のように魔晶石の範囲を絞ってゆけば、森の奥でバラバラに散らばっていたホブゴブリンの群れが一所に集まってゆく。

 元より一つの巣からやってきた群れだ、合流したところで反目し合う訳でもなく、そのまま一つの群れとなっていた。

 多少は同士討ちするかと思っていたが、すんなりと一つになったのは意外だったが。


「まぁ多ければ多いほど、クリスの武功になるからよいがの」


 ホブゴブリンの群れが恐慌状態に陥らないようにゆっくりと、数日掛けて森の奥から追い立てて、野営地にほど近く、しかしすぐにはお互い気付かない程度の距離に来たところで追い立てるのを止め、ワシはぐるりとホブゴブリンの群れを遠回りして避けてから野営地へと戻る。

 するとそこには当初の予定よりも早く着いたのか、既にクリスの姿があった。


「おやクリスや、もうこっちに着いておったのじゃな」


「ちょうど先ほど着いたところさ、セルカは一体どこに行っていたんだい?」


「森の奥から、クリスが狩りやすいように、ホブゴブリンの群れを追い立てておったのじゃよ」


「なるほど」


「ところで、クロスボウは持ってきておるじゃろうな」


「あぁ、報告通りにしっかりと用意させたよ」


 普通の奴はともかく巨大な個体には槍や剣は危険だから、クロスボウと矢玉を大量に用意しておくようにと報告したが、クリスはちゃんとその報告を受けてしっかりと用意していたようで、荷馬車から下ろされている木箱を指差し胸を張るのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ