3360手間
クリスが来るまでの間、安全確保のために巨大な個体だけを残し、他のホブゴブリンを狩りつくすとまではいかないまでも、まともに行動できぬ程に数を減らしておく。
これで万が一巨大な個体が共食いされる対象にはならないであろう、しかし、クリスが来る頃には腹が減って動きが鈍っていると。
「空腹では逆に凶暴になるのでは?」
「凶暴になろうとも、ワシが縛り付けるから何の問題もないのじゃ」
確かに人も獣も空腹になれば凶暴になる、それは魔物同じであるが、どうせワシが動けないようにするのだから、凶暴であろうと大人しかろうと同じことだ。
とはいえ弱っているか否かで倒すのに手間取るかどうかが決まるであろうし、ある程度は弱らせておくのは必要なことなはず。
「まぁ、クリスが来るまでに、腹が減り過ぎて倒れてしもうたら、それはそれで困るがのぉ」
「あの巨体ですし、早々に倒れることは無いと思いますが」
「であればよいがの」
巨大な魔物は、その分のマナを取り込まないとすぐに動けなくなる。
それは体全てが穢れたマナで構成された本物の魔物ではあるが、体が大きければ大きいほど消費も大きいのは何であろうと同じはず。
であれば巨大な個体も空腹に弱い可能性もあるが、ひと月もふた月も断食させる訳ではないので問題はないだろう。
「後はクリスがいつ来るかであるが」
「まだ数日は掛かるのではないでしょうか」
「ふぅむ、であればもう少し探しておくかのぉ」
「神子様は、どの程度まで奥に向かわれているのですか?」
「そう奥までは行っておらぬが、歩いて数日は掛かるやもしれぬし、そろそろ奥から追い立てておいた方がよいやもしれんな」
ワシなれば数瞬と掛からぬ距離であるが、普通に徒歩で向かうならば数日は掛かるかもしれない。
であれば、そろそろ森の奥からこちら側に、ホブゴブリンどもを追い立てておいた方が良いだろう。
「ともかく間引きは今日までにして、明日より勢子をするとするかの」
目的をもって動くならば数日ではあるが、そうでなければどれくらい時間がかかるか分からない、ならばさっさと取り組んだ方が良いだろうと、明日からせっせとホブゴブリンを追い立てるかと、どうやるのが一番良いかと顎に手を当て考え込むのだった……




