3358手間
この周辺の安全の為にもある程度しっかり狩ろうと思っていたが、クリスが来るのであれば徹底的に狩りつくしておいた方が良いだろうか。
無論のことワシが共に行くので、クリスに髪の毛一筋ほどの怪我も負わせるつもりはないが。
「クリスが来るのであれば、張り切って狩っておくかのぉ」
「神子様、それでは王太子殿下の分が居なくなるのでは」
「そのつもりじゃが」
「それでは、王太子殿下の武威が示せません」
騎士たちではなく、近侍の子らがクリスが肩を持つのは珍しい。
とはいえ確かに彼女らの言う通り、大々的に討伐に出発と言っておいて、何の成果も挙げていなければクリスが舐められる。
「とはいえ、鹿や猪のように首を持って帰るわけにもいかんじゃろう」
「もしまだ居るのでしたら、丸ごと持って帰るのはいかがでしょうか」
「あれをかえ?」
確かに巨大なホブゴブリンの首だけというのは人に近い事もあり見た目に難があるが、正直に言って丸ごと持ち帰っても同じだろう。
さらに言えばアレを持ち帰ったところで何となるのか、当然食べる訳にもいかず腐らせるだけなのがオチだ。
魔石も正直期待は出来ないだろう、もしあれが本物の魔物であれば相当な大きさの魔石が採れるが。
「いや、それなりのモノは採れるかの」
「何がでしょうか?」
「魔石じゃよ。ゴブリン程度では欠片にもならぬようなモノであるが、あれだけ巨体ならば…… まぁ欠片くらいにはなるんじゃないかの」
元々魔物を狩って生計を立てていたようなワシらからすれば、クズ扱いでどこも買い取ってくれるような代物ではないが、こちらではそれなりの価値になるだろう。
「やはり何匹か狩って、どの程度の魔石を持っておるか確認するのが良さそうじゃな」
「ですが、早々都合よくいるのでしょうか?」
「ワシなれば、例え森の奥に引っ込んで居ろうとも、探すのは容易いのじゃ。それに何匹おるか確認するのも重要じゃからの」
もし大人しく森の奥に引っ込んで居るのであれば、ワシは必要以上に手出しするつもりはなかったが、クリスの為となるならば別だ。
ならば行動は素早く終えるに限ると、かしこまりましたと近侍の子らが頭を下げた一瞬で、ワシはその場から森の奥へと消え去るのだった……




