3356手間
野営地に戻り留守番役の騎士たちの報告を聞くが、こちらでは巨大なホブゴブリンなどは近づいて来ていない様だ。
「ふぅむ、普通のホブゴブリンも出てこんかったのかえ」
「はい。周囲を哨戒した者の報告によると、ここ数日で確実に減っていると」
「なるほど。あのでかいのに食われたのかのぉ」
共食いをするにしてもあの巨体だ、通常のホブゴブリン同士が食い合うよりも多く食べることは想像に難くない。
そしてワシらが今回見にいった所にあった血だまりの量や、騎士たちが報告に上げた共食いの量を考えるに、ホブゴブリンの個体数はかなり減っていると考えていい。
しかしホブゴブリンがゴブリンと同じくらいの繁殖能力があるとすれば、それでも絶滅にまでは至らないであろうが。
「やはり巨大なホブゴブリンは、我々の見間違いなどではなく……」
「うむ、一匹だけであったが仕留めてはきた」
「では安心でございますね」
「いや、一匹いたということは、他にも居る可能性は十分にあるからの、ワシももう数日ここに滞在して、他におらぬか確認しておくのじゃ」
「それほど強かったのですか?」
「そうじゃの、あの巨体であれば腕の一振りで、人は容易く吹き飛ばされるであろうな。それ以前に、ただぶつかってきただけでも致命的であろうて」
大きさと重さは即ち強さだ、単純にそれだけで他を圧倒することが出来る。
ワシからすれば些事にすらならぬことであるが、凡人なれば正しく致命的であろうて。
なればワシが居る間だけでも、彼らの安全の為に他の巨大なホブゴブリンを駆除するのは当然であろう。
「とはいえじゃ、これほど暴れておるのに見ておらぬということは、さっさと森の奥に引っ込んでおればよいのじゃがの」
「我々としても、逃げていたら助かりますが」
「それはそれで森の奥で増殖しておったら困るから、ワシが居る間に全部来てくれればよいんじゃが」
「もし、我々が遭遇した場合は、どう対処するのがよろしいでしょうか」
「そうじゃな、出来る限り距離を取って、クロスボウを掃射するほかなかろう。とはいえアレは決して鈍重ではないからの、突進を如何に避けるかの方が重要であろうて」
もし騎士たちに被害をなるべくでないようにするならば、遠距離からチクチク攻撃する他ない。
そもそも腕を振るだけで、一般的な槍の間合いより長いのだ、であれば当然そうなるが当然向うも嫌がって近づいてくるであろうから、そこを如何に捌くかであるが決して盾で受け止めようなどとは思わないようにと、万が一巨大なホブゴブリンと遭遇した場合の対処法を思いつく限り伝えておくのだった……




