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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3349手間

 流石に本職だけあって、皮を剥ぎ肉を切り分ける手際は近侍の子らよりも圧倒的に上で、その手際の良さに近侍の子らも感心しているのだが、集中している彼にはその言葉は届いていない。


「あそこを一息に剥ぐなんて出来るなんて」


「真似しようにもなかなか難しい、見事なナイフ捌きですね」


「ふむ、確かにのぉ」


 ワシも近侍の子らと同様に同じところで一度手を止めて、手首を動かしてもう一度切り始めるのが普通だと思っていた。

 しかし彼は見えていない所まで見えているかのような手さばきで、極力手を止めずに皮を剥がしてゆく。


「流石は本職といったところかの」


 ワシらが感心している内に、近侍の子らが半分ほど作業を終えたところで、狩人の彼は一匹を後は焼いたり煮たりするだけの状態にしてしまった。

 

「あの、この肉はどうすればよいでしょうか」


「ん? あぁ、先に皆に振舞うがよい」


 ワシらが食べる分は近侍の子らが今捌いているので、先に騎士たちと食べるがよいと言えば、狩人の男は困惑した様子であったが騎士たちは流石に慣れたもの、ワシが口に出来るのは近侍の子らが捌いた物だけと分かっているので、その理由を簡素に伝えつつも肉を確保し手早く昨日と同じように料理の準備をしている。

 

「鍋やらも別じゃったのに気付かんかったのかのぉ」


「この人数ですので、複数鍋などがあることに疑問を抱かなかったのではないでしょうか?」


「なるほどのぉ」


 ワシの身分として当然の事なのであるが、そういったことに無縁な者からすれば、不思議な行動であり察するのも難しい話であろう。

 本来それは毒殺などを警戒しての決まりであり、無用な諍いを回避する術であるが、ワシの場合はそもそも毒が効かないので仮に毒が盛られたところで何の問題もない。

 とはいえだからといって警戒を怠れば、ワシ以外のどこかで問題が出てくるので、出来る限りワシも慣例に則らねばならない。


「毒は臭いで分かるのにのぉ」


「それなのですが、毒に接する機会のない子は分からないと聞きまして」


「そうなのかえ?」


「はい、私どもの周囲は近侍を始めとして、毒に接する可能性がありますので当たり前だったので気付かなかったのですが、たまたまそういった事と無縁な子と話す機会がございまして」


「そこで毒の臭いが分からんと?」


「はい……」


 当たり前だと思っていたことが、実は全く当たり前ではなかった、そんな事実が発覚しつつも、どうせワシらの立場上それはずっと当たり前のことなのだと気を持ち直している内に近侍の子らの作業も終わり、騎士たちからやや遅れてワシらも肉を焼き食事を始めるのだった……

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